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オリックス大躍進。 仰木彬とイチロー【二宮清純 スポーツの嵐】

Text:二宮清純

がんばろうKOBE

 オリックス、25年ぶりのリーグ優勝なるか!? だが千葉ロッテとのV争いは予断を許さない。

仮にオリックスが優勝すれば、MVPはエースの山本由伸で決まりだろう。この原稿を書いている10月17日現在、25試合に先発し、17勝5敗、防御率1.46。奪三振199。投手分業制の時代、3つの完封を含む5完投は見事である。

 それにしても25シーズンも歓喜から遠ざかっていたとは……。

 不意に1995、96年連覇時の胴上げ監督・仰木彬の顔を思い出した。

 95年1月17日、兵庫県南部は大地震に見舞われた。関連死を含め6434人の死者を出した阪神・淡路大震災だ。

 この年、オリックスは「がんばろうKOBE」を合言葉にシーズンを戦い、88年10月に阪急から球団を買収して以来、初優勝を果たした。

 MVPは2年連続で首位打者に輝いたイチロー。仰木との対談で茶目っ気のある一面を披露している。

<仰木 なんて表現したらいいのか、もう絶叫に近い、地鳴りに近いすごい声援だったね。ワシも野球を何十年もやってるけど、あれは独特の雰囲気だった。「がんばろう神戸」でやってきて、ホント「がんばろう」なんてごく平凡な言葉だけど、ごく当たり前の言葉がこれほど状況にマッチしてたというのがすごいよね。

イチロー でも、優勝できたからよかったけど、もしできなかったらボロクソ言われたでしょうね。「がんばろう神戸」とやって、5位くらいなら「がんばっとけ神戸」って(笑)。>(仰木彬著『勝てるには理由がある』集英社)

日本シリーズはヤクルトの軍門に下ったが、翌96年は巨人を倒し、オリックスとして初の日本一を達成している。この年のMVPも3年連続でイチローだった。

 話は変わるが、近鉄監督時代の野茂英雄、オリックス監督時代のイチロー。日本人メジャーリーガーの投打のパイオニアが、ともに仰木門下生であることは興味深い。

 言うまでもなく野茂と言えば“トルネード投法”、イチローと言えば“振り子打法”である。

 これらの個性的なフォームに対しては、一部にネガティブな見方も存在したが、仰木は一顧だにしなかった。

「顔や体付きが皆、違うように、個性も人それぞれ。それを、まず認めてやらんことには伸びるものも伸びてこない」

 現監督の中嶋聡も仰木門下生のひとり。連覇時のレギュラー捕手だ。きっと草葉の陰で、仰木もその手腕を称えているに違いない。

(初出=週刊漫画ゴラク2021年10月29日発売号)