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大旗を東北の地に。甲子園の7不思議【二宮清純 スポーツの嵐】

Text:二宮清純

越すに越されぬ

 津軽海峡は越えたが、白河の関は未だ越えられず――。

 高校野球関係者が、よく口にするフレーズだ。春の甲子園の優勝校に贈られる紫紺の大旗も、夏の優勝校に贈られる深紅の大旗も関所を越え、東北の地にはやって来ないという意味で使われる。

 ちなみに白河の関とは、福島県白河市にあった古代の関所である。鼠ヶ関(ねずがせき)、勿来の関(なこそのせき)とともに奥州三関のひとつに数えられる。

 本題に入ろう。

 夏の甲子園は1915年、センバツは24年にスタートしたが、東北勢は春夏通じて12回も、決勝に進出しながら、まだ一度も頂点に立っていない。ここまでくれば、もう呪われているとしか言いようがない。

 中には69年夏の松山商(愛媛)対三沢(青森)のように延長18回を戦い抜き、0対0で引き分け。翌日の再試合で力尽きたケースもある。また1点差負けも4試合ある。大旗に何度も手をかけながら、あと一歩のところで逃しているのだ。

 東北勢が悪戦苦闘しているのを尻目に、04年夏、深紅の大旗が飛行機で津軽海峡を越えてしまった。殊勲を立てたのは南北海道代表の駒大苫小牧。同校は翌年の夏も制し、57年ぶりの選手権連覇を達成した。

 全国を北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州の8ブロックに分けた場合、優勝に縁がないのは東北だけ。高校野球7不思議のひとつとも言われている。

 東北勢のレベルは決して低くない。いや、近年は、かつて“野球王国”と呼ばれた四国よりも上だろう。

 個々の選手に目を向けても昨年、MLBア・リーグのMVPに輝いた“二刀流”の大谷翔平(エンゼルス)は花巻東(岩手)の出身。3学年先輩には菊池雄星(ブルージェイズ)がいた。

 この4月に史上最年少で完全試合を達成した佐々木朗希(大船渡-千葉ロッテ)も岩手の産。いずれ彼も海を渡るだろう。

 00年代に入ってからも東北勢は仙台育英(宮城)が2回、東北(同)が1回、花巻東が1回、光星学院(青森)が3回、金足農(秋田)が1回と計8回も決勝に進出しているのだ。

 こうまで不運が重なると、白河の関で一度、お祓いでもした方がいいのではないか、と進言したくなる。実は、もうやったことがあるのかもしれないが、ご加護があったようには思えない。越すに越されぬ白河の関である。

※上部の写真はイメージです。
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