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森保Jリスタート。理想と現実の間(はざま)で【二宮清純 スポーツの嵐】

Text:二宮清純

「チェンジではなくアップグレードを」

 カタールW杯で日本代表をベスト16に導いた森保一監督の続投が決まった。

 年俸2億円の4年契約。26年W杯米国・カナダ・メキシコ大会終了まで指揮を執る。

 目標に掲げた「ベスト8」には届かなかったものの、1次リーグでW杯優勝4回のドイツ、同1回のスペインを撃破した手腕を踏まえれば、続投は当然だろう。

 またキャプテンの吉田麻也が「いろんな監督とやってきたけど、間違いなく一番尊敬できる監督」と語ったことからも明らかなように、選手たちとの関係も良好だった。

 大会期間中、前ドイツ代表監督のヨアヒム・レーヴ、元チリ代表監督のマルセロ・ビエルサ、現ベルギー代表監督のロベルト・マルティネスらの名前が後任候補としてメディアをにぎわせていたが、協会は継続性を重視したようだ。

 ベスト8進出をかけたクロアチア戦にPK戦の末、負けた後、GK権田修一は、今後の課題を聞かれ、「チェンジではなくアップグレードを」と語った。これはストンと腑に落ちた。

 ポーカーで言えば、手元にせっかくワンペアがあるのなら、それを元にスリーカードを狙うべきだ。総取っかえは、全てを無にしかねない。2大会連続で決勝トーナメント進出を果たした日本に必要なのは、権田が指摘するように「チェンジ」ではなく「アップグレード」の思想だろう。

 問われるのは、何を変え、何を守るのか。それをはっきりさせることである。

 森保監督は、口ぐせのように「良い守備から良い攻撃を」と語り、実際、堅守速攻型のチームをつくり上げたが、それはW杯で想定以上の成果を得た。ドイツ戦は8分間、スペイン戦は、わずか3分の間に同点弾と逆転弾を叩き込んだ。ハイブレスからのショートカウンターは、たとえそれが、“弱者の戦術”だったとしても、大国相手には効果的であることを証明した。

 とはいえ、世界最高峰のプレミアリーグのアーセナルでプレーするDF冨安健洋が、いみじくも語ったように「いつまでもアジャストサッカーでは成長しない」のも、また事実である。

 これを受け、森保監督は「ボールを握って、ゲームをコントロールすること」を第二次政権の課題にあげた。

 ただし、一足飛びにそれをやるのは危険である。2014年ブラジル大会、ザックジャパンは「自分たちのサッカーで世界に勝つ」ことを目標に掲げて臨んだが、惨憺たる結果に終わった。

 浮ついた理想は地に足のついた現実に復讐される。それを忘れてはならない。

※上部の写真はイメージです。
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