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暗雲立ち込める札幌五輪の行方【二宮清純 スポーツの嵐】

Text:二宮清純

招致活動は仕切り直し

 進むも地獄、退くも地獄とは、こういうことか。

 札幌市が招致を目指す2030年冬季五輪・パラリンピックに暗雲が立ち込めている。

<東京五輪・パラリンピックを巡る汚職、談合事件の影響で日本の機運が停滞し、札幌市を最有力候補としてきた国際オリンピック委員会(IOC)が他の候補地に事実上照準を切り替えたとみられる。日本側でも34年以降への先送り論が強まっており、招致活動は仕切り直しとなる>(共同通信・4月14日配信)

 9日に3選を果たした札幌市の秋元克広市長は「時期の問題を含めて、これから(協議する)」と語った。

 また五輪招致に反対した2人の対立候補の票が、合わせて4割超に及んだことを受け、「(市民に)いろいろな情報をしっかりお伝えした上で判断していただく材料を公開討論会のようなかたちでやっていきたい」とも述べた。

 それにしても罪作りなのは東京五輪・パラリンピック組織委員会である。

 本来ならば、22年中にも30年大会の開催都市が札幌に一本化され、23年夏前に予定されていたインド・ムンバイのIOC総会で、正式に決定する予定だった。

 札幌は東京五輪の猛暑対策に伴う会場変更に際し、マラソンと競歩を受け入れたことでIOCには受けがよかった。

「IOCに大きな貸しをつくったことで30年の札幌開催は決定的になった」

 自信満々にこう言い切るJOC幹部もいた。

 ところが22年8月に組織委の元理事が受託収賄罪で逮捕。汚職に加え、談合の見本のような入札での受注調整も明らかになり、招致熱は一気に冷え込んだ。IOCとの蜜月にもヒビが入った。

 一連の汚職は、元を辿ればIOCの拝金主義にあるのだが、彼らに反省の色はない。五輪ブランドに傷が付くことを恐れたIOCは、ほとぼりが冷めるのを待つ作戦に転じた。

 とはいっても、いつまでも待ってはいられない。札幌側はIOCの支持が得られず30年大会開催が困難な場合、「34年大会も視野に入れる」(組織委関係者)作戦に変更したとみられる。

 札幌まで新幹線が延伸するのは30年度末(31年3月)の予定。地元の経済界からは「30年大会に間に合わないのなら、34年の方がいい」(同前)という声も上がっているという。しかし34年大会は米ソルトレークシティーの2度目の開催が有力視されており、先行きは、いよいよ視界不良となってきた。

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