SPORTS LAB
- スポーツを通じて美しくそして健康に -

  • HOME
  • SPORTS LAB
  • 変則スイングのゴルファーはなぜ上手いのか?【「9時・4時スイング」でゴルフはすべて上手くいく/阿河徹】

変則スイングのゴルファーはなぜ上手いのか?【「9時・4時スイング」でゴルフはすべて上手くいく/阿河徹】

Text:阿河徹

変則的なスイングのゴルファーがなぜ上手いのか?

それは、9時から4時のポジションの動きが正しいからであり、プロや上級者は必ずと言っていいぐらい同じ動きをしているものです。ダウンスイングでクラブが地面と水平な位置まで下りてきた時計の文字盤でいう9時のポジション「ハーフウェーダウン」とも言いますが、この時点でクラブがスイングプレーン上にあるのが上級者のスイング。そこから右ヒジおよび右手首のリリース動作と共にボールをとらえ、4時のポジションまでクラブが抜けていきます。

この範囲のスイングの動作はみな同じであり、だからこそ上級者だと言えます。どんなに変なテークバックでも、トップオブスイングでも、9時の段階でクラブを正しいポジションに持ってくることができ、その後、正しくクラブとボールをコンタクトできれば飛距離は出ますし、コントロールも可能です。

私はこの「9時・4時スイング」を最重要と考え、まったくのゼロからゴルフを教える場合はここから覚えてもらうようにするのですが、そうすると上達は驚くほど早いのです。実際問題、ゼロベースから教えることはあまりないのですが、以前まったくゴルフをやったことがない若い弁護士の先生を教えたとき、6カ月でパープレーまでいったことがありました。本当に初めてで何の予備知識もありませんから、私の言う通りに9時から4時のスイングをコツコツと練習してくれたんですね。

1カ月もかからずに「9時・4時スイング」で正しく球をとらえられるようになり、そこからの進歩は早かったのです。9時のポジションが体にインプットされていますから、そこから逆算してトップの位置は「ここが妥当だな」とわかりますし、トップから逆算すれば「テークバックでここに上げたらそこに持っていきやすい」となりますので、動きをつないでいけるんです。何を説明しても「そりゃそうだよね」と納得してもらえるので、スイングの全体像はすぐにできあがりました。

ジュニアゴルファーがすぐ上手くなるのはまさにこれと同じで、ゼロベースから正しいスイングを教えてあげれば割と早くできるようになるんです。ある若手プロが小学校3年生のとき、ゴルフ場の風呂場の脱衣場で着替えをしていたところ、プレーを終わったオジサンが声をかけてきたそうです。3年生の子が風呂場にいること自体ちょっと違和感がありますし、興味を持ったんでしょうね。そのオジサンが「おお、にいちゃん、いくつで回って来たんだ?」って聞くと、そのプロは「66です」って答えたそうです。するとそのオジサンは「そうか、早く上手くなれるように頑張れよ!」と励ましの言葉を残して湯舟に消えたそうなんですが、お察しの通り、その少年は18ホールを66で回っていたんです。

ところがオジサンは9ホールだと思い込んでいる。笑い話のような実話ですが、ここにゴルフの摩訶不思議さがあります。冷静に考えてみれば小学校中学年の子がアンダーパーで回って、20年以上やっているオジサンが100を切れないっておかしいですよね。ジュニアゴルファー出身でプロゴルファーになった選手はたくさんいますが、その子たちに類い稀な運動神経やとてつもない才能があるかと言えばそうではありません。必要なのは正しい知識と教育なんです。ゼロベースから教われば誰でも上手くなれるんですよ。

某弁護士の先生と今はお付き合いはないんですが、当時はゴルフがそんなに面白くないって言っていましたね。なぜかというと簡単にできてしまうからです。面白くない理由を聞くと「だって2回で乗るじゃないですか」って言ってました。打ったら2回で乗って、後はパットが入るか入らないか、だからボギーはないというのがその人にとってのゴルフ。「やっちゃった! っていう大きなミスが出ない限りボギーなんて出ないですよね」って真顔で言ってました。その先生にとってはOBを打つなどということが理解できないわけですよ。

とにかく9時・4時スイングができているので曲がりようがないんです。ゴルフ場に行くとオジサンたちが右に左に苦労していますけど、彼にとっては「どうやったらあんな方向に飛ばせるんだ?」って心の底から不思議なんですよ。長年試行錯誤している人にはカチンと来る発言ですが、これが事実です。ゴルフはゼロベースで始めれば難しくはないんです。また、9時・4時スイングさえできていればスイングが変則に見えても思い通りにボールは飛ばせます。

【書誌情報】
『「9時・4時スイング」でゴルフはすべて上手くいく』
著者:阿河徹

「9時・4時スイング」とは、時計の9時の位置から4時の位置まで動くスイングのこと。この範囲のクラブと体の動きが、ゴルフ上達のポイントであると著者は考えている。本書は、そのスイングをする際の体の動き、クラブの動きを写真を数多く使い細部にいたるまでわかりやすく解説。加えて、スイング中の体の動きが身につく練習ドリルも紹介している。「9時・4時スイング」でゴルフは劇的に変わる!