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海外では表わす適当な言葉が存在しない日本固有の概念「軸=JIKU」とは!?【廣戸聡一ブレインノート】

Text:廣戸聡一

筋肉ではなく骨の連携で身体を動かす

●身体のコントロール=骨格のコントロール
「4スタンス理論」や「5ポイント理論」は、人間の根本的な身体の使い方について考えた理論であり、ここで言う身体の使い方とは、骨格をコントロールすることを示しています。たとえば大人がコップを持ち上げるとき、たいていは指や手のひらを使ってコップを握り、腕を使って持ち上げるでしょう。

では、幼児はどうでしょうか? 幼児にとってコップは大きくて重いものです。片手では持ちきれず、両手を使わなければいけないかもしれません。もしかすると両手の力でも持ち上げるには重すぎるかもしれません。そんなとき幼児は、腕だけではなく全身を使ってコップを持ち上げようとします。

そしてそのために、全身をうまくつなげ、全身を連動させてコップを持ち上げる動作に連結させていきます。幼児の身体には大人ほどの筋肉はついていませんから、このとき主動するのは骨ということになります。では、どのように全身の骨をつなげるのでしょうか?その答えが、「軸」です。

軸の形成された身体は、すべての骨、骨格を連動させることができます。軸さえあれば、全身の能力を無駄なく動作に使うことができるのです。

「軸=JIKU」は日本固有の概念

私たち日本人にとって、「軸」という言葉は馴染みの深いものです。普段から「軸がブレていない見事なスウィングだ」「あの人の振る舞いは、軸がしっかりしていて美しい」などという言葉を耳にします。では、この「軸」とは一体何でしょうか?

「軸」とは、身体に存在する動作の起点となる部位を揃えた、観念上の直線のこと。身体を無理なく動かし、可動域を広げて高いパワーを生み出すためのポイントとなるのが「軸」であり、これは、古くから伝承されてきた日本固有の概念です。そのため、たとえば米国でセミナーを行うときには、「軸」が何か?を説明するのに大変苦労します。海外では「軸」を表わす適当な言葉が存在しないのです。

そこで、私は「軸」を「JIKU」と表現しています。どんな英訳にも当てはまらない「軸」を、無理に何かの言葉に結びつけても真意は伝わりませんから、「JIKU」という新たな概念として説明することにしたのです。すると、意外にすんなりと理解してもらうことができ、最近では「軸=JIKU」として認識されつつあります。

●筋肉の役割とは?
現代では、ほぼすべての競技でウェイトトレーニングが行われていると言っても過言ではありません。しかし、パフォーマンスに関係なくついた筋肉は、果たして実戦で役に立つのでしょうか。もちろん、運動において筋肉は不可欠です。筋肉が働かなければ、骨も動かすことができません。では、筋肉はどのような働きをするのでしょうか?

まずひとつめの大きな役割は、骨格を初動させることです。脳が指令を出して筋肉を収縮させたり脱力させたりすることで、関節などを動かし始めます。そしてもうひとつの役割が、骨格を守ることです。骨は強い組織ですが、圧力の加わる方向によっては簡単に折れてしまうからです。

このように筋肉は、人間の動作にとって大切な組織ですが、動作はあくまで骨の連携によって行うもので、筋肉に無駄な緊張をさせないことが、パフォーマンスアップにつながります。

「コツをつかむ」「骨子」―本質部分を支える骨(コツ)

あらゆるスポーツでは、体幹を安定させつつ躍動することが重要です。安定しながらもパワフルに躍動するには、筋肉の力を借りてもあまり意味がありません。力は筋肉で伝達しないからです。では何によって伝わるかと言えば、フレームです。フレームを人間の身体で言えば骨格、つまり骨が力を加えているわけです。

筋肉は、左右対称に作られた骨格についていて「縮む・伸びる」だけのもの。瞬きも呼吸も心臓の拍動も、筋肉が動く実感がないのは、脳が過剰な実感を与えないからです。どこかが動くたびに筋肉が張ったり痛くなるようなら、生きていくのが大変です。筋肉は、骨格を動かすための道具にすぎないのです。

ですから、筋肉だけが人間の動作を操れるんだという「筋肉至上主義」の考え方からは、もう卒業しなければなりません。日本には「コツをつかむ」、「骨子をまとめる」など「骨」を使った言葉があるように、古くから物事を支える本質部分のことを「骨(コツ)」と表現してきました。日本人は昔から、骨格の重要性を会得していたのです。

【書誌情報】
『廣戸聡一 ブレインノート 脳と骨格で解く人体理論大全』
著者:廣戸聡一

「本来の自分の身体の動きと理屈を知り、身体だけでなく精神的な部分との兼ね合いの中で、“いかにして昨日の自分を超えるか”という壮大なテーマを、人体理論の大家であり、日本スポーツ・武道界の救世主と呼ぶに相応しい、廣戸聡一が、自身の経験と頭脳のすべてを注ぎ込んで著す最強最高の身体理論バイブル。四半世紀でのべ500,000人の臨床施術により、多くのトップアスリート、チーム、指導者、ドクターとの関わりの中で行き着いたトレーニング&コンディショニング理論の集大成、ここに完成。オリンピック競技を含む全52種目を個別にも論及、紐解いた、すべてのアスリート、指導者、スポーツファン必携の書!