必要なのは、平面ではない立体的な想像力
●立体的な身体感覚を得る
人間の身体は立体物ですから、骨格や動きを立体的に捉えなければなりません。「上から見たら丸で、横から見ると四角……」と、人体を平面的に捉えている限り、真実に近づくことはできないのです。私がスポーツ選手のコンディショニングをするときも、選手の手足の動きを外から見るのではなく、骨格の動きを立体的に見ています。また、赤ちゃんは、手をしゃぶり、足を舐めることで、寝返りやハイハイ、立ち上がりの準備を始めますが、これは、手や足を舐めることで、自分のスケール感を確認しているのです。
このように「自分の身の丈を骨で覚えること」、つまり脳と骨格とのやり取りで自分の身体感覚を得ることは、とても重要です。これまでも述べてきたように、筋肉は出力であり、技術を支える割合はさほど大きくありません。ですから、まずは骨格のあり方をしっかりと捉える必要があるのです。
●動きを立体的にイメージする
人間の運動方向は、基本的に6方向しかありません。前後、左右屈と、左右にねじる(捻転)という動きです。複合的に使うことも多く、たとえば斜めに物を拾うという動作では、前に倒すことと横に倒すこと、回転することを同時に行っています。そのため、立体的にバランスのとれた動きを身につけておくことが大切です。動きを常に立体=三次元として考えると、身体は格段に扱いやすくなってきます。そして、それが柔軟性のアップにもつながるのです。
子どもの場合も同様で、運動に対する勘が良い子、センスがある子は、自分がどう動けば良いかを立体的に想像することができます。たとえば逆上がりをやってみようというときは、鉄棒を持ってくるんと回る一連の動きの流れが頭の中で完成しています。一方、まだ立体感覚が整っていない子は、手は肩幅の広さに開いて鉄棒を握る、上体はそっくり返る、足を蹴り上げる……と、動作を分解して考えてしまいます。ある動作の最中に別の動作が入ってくると、頭が混乱してうまく回れるはずがありません。立体的な想像力を持てない限り、運動やスポーツは上達しないのです。
6方向の動き
【書誌情報】
『廣戸聡一 ブレインノート 脳と骨格で解く人体理論大全』
著者:廣戸聡一
「本来の自分の身体の動きと理屈を知り、身体だけでなく精神的な部分との兼ね合いの中で、“いかにして昨日の自分を超えるか”という壮大なテーマを、人体理論の大家であり、日本スポーツ・武道界の救世主と呼ぶに相応しい、廣戸聡一が、自身の経験と頭脳のすべてを注ぎ込んで著す最強最高の身体理論バイブル。四半世紀でのべ500,000人の臨床施術により、多くのトップアスリート、チーム、指導者、ドクターとの関わりの中で行き着いたトレーニング&コンディショニング理論の集大成、ここに完成。オリンピック競技を含む全52種目を個別にも論及、紐解いた、すべてのアスリート、指導者、スポーツファン必携の書!
公開日:2021.05.23