SPORTS LAB
- スポーツを通じて美しくそして健康に -

4スタンスのタイプで意識している身体の箇所が違うプロ野球選手の投球イメージとは!?【廣戸聡一ブレインノート】

Text:廣戸聡一

動作とイメージ

●プロ野球選手のピッチングイメージ
下の絵は、あるプロ野球チームの投手とコーチに、それぞれ「ピッチングの際、身体のどこにフォームの意図や動作イメージを感じるか」について、漫画の世界でいう運動線をマーキングしてもらったものです。4スタンスのタイプによって、意識している身体の箇所がずいぶん違うことがわかります。

また、ピッチングのどの時間帯(タイミング)を切り取っているかにも違いがあり、これを見るとお互いの感覚の違いがよくわかります。タイプによる違いを理解することは、他人を知るとともに自分をより深く知ることにもつながります。

●ボールの軌道をコントロールする
ボールを投げたり蹴ったりするとき、地球には必ず1Gという重力が働きます。そのため、ボールの軌道は重力加速度によって必ず放物線を描くことになり、ボールをミドルスピードで投げたときは、距離の1/2のところを頂点とする放物線になります。では、遅いスピードで同じ場所に投げたいときはどうすれば良いでしょうか?スピードを遅くするために力を抜いて投げれば距離が届きませんから、出力はもちろん同じです。

ということは、同じパワーでボールを遅く見せなければいけません。そのためには、「脳の中の放物線をコントロールする」のです。目標物よりも自分に近い場所に放物線の頂点がくるとボールのスピードは遅くなり、より目標物に近いところに頂点がくると、速くなるようになっているのです。放物線を考慮しながらボールをコントロールすると、狙った場所に狙ったスピードで、ボールを投げたり蹴ったりすることが可能になる、ということです。

タイプを知ることは己を知ること
~あるメジャーリーガーとのエピソード~

数年前にMLBデビューを果たしたK選手との出会いは、彼が日本の球団に入団した年の秋でした。それ以前に、当時同じチームの2軍コーチを務められていた方から、「何か無理しているようだから一度診てもらえませんか」と相談があり、その後、チームOBで私が可愛がっていただいている方からのご紹介もあり、夏に球団からも「ノースロー」を厳命されていたときに、初めてお会いしました。

そのときの彼の身体の状態は、やはり良いとは言い難く、症状としては、肩自体を傷めているというより、肋骨が変形していることにより腕が上がらないことが“投げられない”原因になっていました。ご本人とも「肩を守りながら元に戻すことを考えましょう」と話し、治療をスタートしました。そこから3カ月は、私の道場で週二回ほどの治療と身体のコンディショニングについての考え方、実践の仕方について、アプローチしました。

当時のK投手は、どうやったら良いボールが投げられるか、プロ野球選手として良い技術を獲得できるかに、生来の真面目さで向き合い、トライ&エラーを繰り返していました。その結果、自らのタイプと異なる動きをも取り入れようとしたことに、身体が悲鳴をあげていました。元来の秀でた能力を発揮するためには、傷めた身体をしっかりとメンテナンスすることが必要なのは、日本でもメジャーリーグでも同じ。最高レベルのパフォーマンスをするためにも、まずは、基本的にどういう風に身体をケアするのが良いかを考え、150km以上を投げていたときには、何が良くて、今は何が違うのか。投げられない状態になったときだったからこそ、懸命に本来の姿を取り戻す努力を惜しまず続けていました。

彼自身、思うような投球ができなくなって1年以上も続いた状態から、どこまで回復できるかは、「自身に合った動きだけを取り入れ、疲労が溜まったなら必要な休養を取ること」だと、繰り返し伝え、治療開始から3カ月経った12月には、合宿を張ることにしました。それは、取りも直さず「集中して心身をメンテナンスする」ためのものでした。新潟県のスキー場で有名な妙高で行った合宿で決めたことは、「翌2011年の春のキャンプの初日にブルペンでボールを投げる」こと。イキのいいストレートで初めにミット音を鳴らせられるか、を目指した合宿でした。「ノースロー」状態から、春先ですから130km後半の球をミットに投げられたら上出来、と言って、彼は意欲的に挑戦しました。

その甲斐あって、春のキャンプには予想を上回るミット音を響かせ、受け手のキャッチャーだけでなく、首脳陣を驚かせ、翌シーズンは前半戦だけで期待以上の勝利数を挙げることになります。その後の活躍は、言うまでもありません。ただ、ここで覚えておいていただきたいのは、彼ほどの投手でも、自分に合った形(タイプ)を見失うことが、実際に起きるという現実です。やらなければならないことを全力で向き合ったことで、彼のメジャーデビューの夢は潰えなかった。自分でやれること、自分にはやれないこと、自分がやるべきこと、自分がやってはならないことを、十年近く自分に言い聞かせて、今日も彼は投げ続けています。

【書誌情報】
『廣戸聡一 ブレインノート 脳と骨格で解く人体理論大全』
著者:廣戸聡一

「本来の自分の身体の動きと理屈を知り、身体だけでなく精神的な部分との兼ね合いの中で、“いかにして昨日の自分を超えるか”という壮大なテーマを、人体理論の大家であり、日本スポーツ・武道界の救世主と呼ぶに相応しい、廣戸聡一が、自身の経験と頭脳のすべてを注ぎ込んで著す最強最高の身体理論バイブル。四半世紀でのべ500,000人の臨床施術により、多くのトップアスリート、チーム、指導者、ドクターとの関わりの中で行き着いたトレーニング&コンディショニング理論の集大成、ここに完成。オリンピック競技を含む全52種目を個別にも論及、紐解いた、すべてのアスリート、指導者、スポーツファン必携の書!