陸上競技 [ハードル走]競技別解説
身体を変形させ、走る感覚で障害をクリアする
短距離もハードルも「短い距離を速く移動する」という同じ目的を持つ競技ですが、通り道に障害があるハードルの場合は、障害をいかに効率良くすり抜けるかがポイントになります。まず大切なのは、障害を「走る」という感覚でハードルを跳ぶこと。ハードルを跳んだあと、着地の1歩目をランニングの1歩目に素早く戻すことで、走りのリズムを崩さずに障害をクリアすることができます。そして、もうひとつ重要なのが、頭の高さを一定に保ったまま、身体を変形させてハードルを跳び越えるということです。
無駄なジャンプをせずに最短距離を進む動きは、水泳にも共通するものがあります。また、空間を把握し、ハードルを跳ぶイメージを明確に持つことも重要です。たとえばAタイプは、前足がハードルを越えた時点で身体も抜けたという感覚を持ちますが、Bタイプは前足がハードルを越えていても、後ろ足を抜くまでは身体が抜けたという感覚を持つことができません。身体がハードルを抜ける前に次のランニング動作に入ると、当然スピードは削がれますから、ハードルを乗り越えるイメージをどこに持つのか、手前に持つのか奥に持つのかを、明確にしておくことが大切です。
競技の起源
ハードルの歴史は中世ヨーロッパに遡る。貴族たちは馬に乗り、小川や柵などを跳び越えて楽しんでいたが、馬に乗れない人たちは自らの足で野山を駆け、障害物を跳び越えて楽しんだ。19世紀になると、競技場で障害物を跳び越える競技「ハードル走」が始まったが、この頃ハードルとして使用されていたのは、羊の囲いだったという。
踏み切り
走るリズムを崩さないことが、ハードルの踏み切りのポイントになる。
【A】踏み切ると同時に脚が瞬時に上がる
つま先から踏み切ると同時に重心が前方へ移動してリード脚が瞬時に上がる。リード脚の膝とみぞおちは進行方向に突き進むように踏み切る。
【B】ためを作って脚を後ろから送り出す
地面を強く踏み、十分にため4 4 を作ってリード脚を後方から前方へと送り出す。骨盤とリード脚のかかとが一番近い位置に来たときに重心移動がなされると、大きな推進力を生むことができる。
【クロス】クロスタイプはランニングアームアクション
リード脚側の腕が後ろに引かれ、リード脚と反対側の腕が前に伸びる。一般に、ランニングアームアクションと呼ばれるフォームになる。
【パラレル】パラレルタイプはダブルアームアクション
リード脚側の腕を後ろに引くことができずに抱えたり横に開く形になったりする。一般にダブルアームアクションと呼ばれるフォームになる。
【書誌情報】
『廣戸聡一 ブレインノート 脳と骨格で解く人体理論大全』
著者:廣戸聡一
「本来の自分の身体の動きと理屈を知り、身体だけでなく精神的な部分との兼ね合いの中で、“いかにして昨日の自分を超えるか”という壮大なテーマを、人体理論の大家であり、日本スポーツ・武道界の救世主と呼ぶに相応しい、廣戸聡一が、自身の経験と頭脳のすべてを注ぎ込んで著す最強最高の身体理論バイブル。四半世紀でのべ500,000人の臨床施術により、多くのトップアスリート、チーム、指導者、ドクターとの関わりの中で行き着いたトレーニング&コンディショニング理論の集大成、ここに完成。オリンピック競技を含む全52種目を個別にも論及、紐解いた、すべてのアスリート、指導者、スポーツファン必携の書!
公開日:2021.06.08