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コントロールしやすいドリブル時のボールの蹴り方【物理でわかるスポーツの話】

Text:望月修

ボールのどの位置を蹴るかで進み方が違う

 止まっているボールがあります。このときにどの位置を蹴るかによって進み方に違いが生じ、転
がりが3通りに別れます。例えば、地面からボール直径の0.833倍の位置(プロ仕様5号ボールは直径22cmなので、地面から18.3cmの部分)を蹴ると、ボールは地面を滑ることなく最初からコロコロと転がります。この位置を「転がり蹴り位置」と呼ぶことにします。

 では、転がり蹴り位置からもっと上を蹴るとどうなるか。ボール表面の前方への回転速度がボールの進む速度(並進速度)より速いために、回転速度を減速する方向に摩擦力が作用します。摩擦力の作用する方向はボールの進む方向ですから、ボールの回転速度が落ち、並進速度が加速していきます。初めのうちは回転が空回りしながら滑って進みますが、回転速度がボールの移動速度と一致した時点から一定速度で転がりはじめます。

 次に、転がり蹴り位置から下を蹴ると、遅い逆回転をしながら滑って進みますが、やがて回転数が上がるのと同時に進む速度は落ちていく。この3通りの進み方があるわけです。

 ドリブルについても考えてみましょう。ボールの転がる速さと選手の走る速さが同じであれば、選手とボールが同じ場所近くで動くことになります。このときに転がり蹴り位置より下を蹴ると、ボールにはブレーキがかかってコントロールしやすい状況になります。上を蹴るとボールに加速がつき選手より前方に転がっていきかねません。

 また、ボール中心より下を強く蹴るとボールが飛び上がり、バウンドなどして扱いが難しくなります。相手をかわしてドリブルするときは、止まってボールをキープしたり、走る速度の緩急をつけたり、走る方向を変えたりしてフェイントをかける必要があります。その都度のボールさばきは練習で身につけるほかありませんが、ボールを蹴る位置は転がり蹴り位置より下を意識したほうが無難なようです。


【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 物理でわかるスポーツの話』
著:望月修

シリーズ累計発行部数130万部突破!「100メートル走で人類の限界は9秒21?」「サッカーでコーナーキックをうまく決めるヘディングの角度とは?」「巨漢力士はテコの原理で持ち上げろ!」「走り幅跳びで観客の手拍子は果たしてプラスに働くのか?」「バスケで3点シュートを決める方法」「スキージャンプ、究極のムササビ飛行?」「理想的な泳ぎ方とは?」ーー全44のスポーツ、運動を物理で読み解く。スポーツの見方が変わる!記録がのびる、勝てる方法がわかる!そして観戦が100倍楽しくなる1冊!