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遺伝子とDNAはどう違う?【病理学の話】

Text:志賀貢

記録媒体の名前と書きこまれた情報

DNAと遺伝子は、その持つ意味がまったく違います。これまで述べてきた通り、DNAというのはあくまでも物質名であり、遺伝子というのはどちらかというと概念的なものです。

辞典などで遺伝子を調べると、「遺伝形質を発現させる」という独特の表現がよく使われていますが、これは「遺伝情報に基づいてタンパクが産生される」という意味とほぼ同じです。

簡単にいえば、遺伝子は「どのアミノ酸をどのような順番で並べるのか」という塩基配列にコードされる遺伝情報なのです。

タンパク質はアミノ酸という分子が鎖状につながった物質で、真核生物では全部で21種類(人では20種類)のアミノ酸の並び順によってタンパク質の性質が決まります。

DNAは物質の名前であり、記録媒体の名前です。そこに書き込まれている情報のことを遺伝子というのです。

遺伝子というのは、これまでも述べてきたように、DNA(デオキシリボ核酸)という物質に刻まれた生命の設計情報なのです。

よくいわれる例に本が挙げられます。DNAは遺伝子情報を保持している物質本体、つまり本の紙となります。紙の上にはインクでプリントされた文字が並べられ、文章となってひとつの情報が伝えられます。

文字は4つの塩基(C・G、A・T)で、その並び順でいろいろな情報(遺伝情報)が記録されるのです。ちなみに、次項で解説します、「染色体」は一冊の本そのもので、「ゲノム」とは46冊が並べられている本棚になります。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 病理学の話』
著:志賀 貢

シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「病理学」について切りこんだした一冊。病理学とは「病(気の)理(ことわり)」の字のごとく、「人間の病気のしくみ」です。コロナウイルスが蔓延する中で、人はどのようにして病気になるのかが、改めて注目されています。細胞や血液、代謝や炎症、腫瘍、がん、遺伝子などと、人体のしくみ・器官、食事を含む生活、加齢などさまさまな環境との関連から、「病気」を解明するもの。専門書が多いなか、病気とその原因をわかりやすく図解した、身近な知識となる1冊です。

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