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どうして食べ物がのどに詰まるの?【解剖学の話】

Text:坂井建雄

動物の食道と気道は完全に分かれている

急いで食事をすると、食べ物がのどに詰まることがありますが、ヒト以外の哺乳(ほにゅう)類にはありません。なぜなら、のどの構造が違うためです。

ヒト以外の哺乳類ののどは、食べ物の通り道である食道(しょくどう)と、空気の通り道である気道が完全に分かれ、立体交差になっています。鼻から取り入れた空気は喉頭(こうとう)に、口から取り入れた食べ物は食道に入るので、食べ物がスムーズに流れるのです。一方、ヒトは、のどの部分で食道と気道が一緒になっているため、交通整理をする必要があります。

ヒトが話せるのは切り換え式を採用したから

のどには「軟口蓋(なんこうがい)」と「喉頭蓋(こうとうがい)」という2つのふたがついています。このふたを線路のレールを切り換えるように、開けたり、閉じたりして食べ物は食道へ、空気は気道へと振り分けています。

たとえば、食べ物を飲み込むときは、軟口蓋と喉頭蓋が気道にふたをし、食道への通路を確保します。呼吸をするときは、喉頭蓋が持ち上がって気道の入口を開きます。

この切り換え装置がうまく動かないと、食べ物が喉頭に引っかかって詰まったり、気管に入ってむせるなどのアクシデントが起きるのです。

不便ですがメリットもあります。それは、声が出せることです。声を出すためには声帯(せいたい)を震わせて音波(おんぱ)をつくりますが、その音波は、鼻ではなく口のなかで共鳴させないと声にはなりません。ヒトののどは切り換え式になったからこそ声が出せるようになり、言語も獲得できたのです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 解剖学の話』
著:坂井建雄 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
順天堂大学保健医療学部特任教授、日本医史学会理事長。1953年、大阪府生まれ。1978 年、東京大学医学部卒業後、ドイツのハイデルベルグ大学に留学。帰国後、東京大学医学部助教授、順天堂大学医学部教授を歴任。医学博士。専門は解剖学、細胞生物学、医学史。専門書だけでなく一般向け書籍まで、著書、監修書を多数刊行。近著書は、『医学全史』(ちくま新書)、『図説医学の歴史』(医学書院)など。

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