右手はスライドして使われるべきであることを知る
二点吊り子の四角形で振るキープレフトにおけるメリットのひとつに、テコの原理も使用できることがあります。
ご存知のように、テコには「支点」「力点」「作用点」の3つが存在します。スイングでテコの原理を使うといった場合にとてもややこしいのは、スイングのパートによってこの3つのポジションが目まぐるしく変化することです。
変化する理由は、スイング中にヘッドスピードが絶えず変わるから。たとえば、ダウンスイングの始動時はヘッドの速度がゼロになります。そこから徐々にヘッドが加速していきますが、始動時はヘッドよりもグリップ側の移動距離が長く、速度も速い。この時点では「支点は右手」「力点は左手」「作用点はヘッド」です。支点と力点は離れていて、支点と作用点は近いほうが運動効率が高いので、この時点では右手と左手は離れているほどいいといえます。
しかし、ダウンスイングが進み、ヘッドの速度が徐々に上がってくるに従って三者の役割は変わり、「支点は右手」「力点はヘッド」「作用点は左手」となります。ここでも支点と力点は離れていたほうがよく、支点と作用点は近いほうがいい。つまり、右手と左手は近づいたほうがいいのです。この現象はバックスイングでも同様に起こっています。
こう見ると、本来、右手の位置はスライドして使われるべきであることがわかります。餅つきの杵、つるはし、薪割りの斧などのようにです。こういった道具に比べるとクラブの先端は重くないので、支点である右手は移動しなくても使えますが、この原理を知ることで見えてくるイメージや生まれる動作は存在します。
右手をスライドさせながら素振りをすると、この原理を使うことによる効果が手にとるようにわかります。すなわち、バックスイングで右手を左手から遠ざけていき、ダウンスイングで寄せてくる。このとき、右手が下になることが絶対条件です。
この感じでインパクト〜フォローに向かったときに右手を離したくなるのが正解。実際に離してみてもいいでしょう。これが振り子でなく吊り子=キープレフトの使い方。インパクトの再現性が高まります。
右手をスライドさせながらクラブを振ると
「右手を放したくなる」スイングを実感できる!
出典:『世界が認めた究極のシンプルスイング キープレフト理論』著/和田泰朗
【書誌情報】
『究極のシンプルスイング キープレフト理論 実戦強化編』
著者:和田泰朗
ゴルフスイングは一般的に「振り子運動」ととらえられている。本書のスイング論である「キープレフト理論」は、クラブを体の左サイドにキープして振る考え方。クラブのグリップエンドからシャフトがもっと長くのびていて、それが体の左サイドにずっとあるように振るイメージで、スイングを「吊り子運動」を考えている。振り子運動に比べリストコックやアームローテーションへの意識は不要で、スイングの動きがシンプル、再現性が高いスイングといえる。スイングに不安を持つアマチュアゴルファーに、ぜひすすめたい。本書は、2019年に刊行した『究極のシンプルスイング キープレフト理論』に続く著書。前作のテーマ「スイング作り」を、今回は「スコア作り」に変え、「キープレフト理論」を駆使したラウンド実戦法写真を多用してわかりやすく解説する。この理論の考案者・和田泰朗プロは、世界的ティーチングプロ団体WGTF(World Golf Teachers Federation)の一人で、会員の1%しかいない「マスター」の資格を取得。さらにこの理論が認められて2019年、WGTFのティーチングプロ・トップ100に選ばれている。また、2020年には女子プロのトーナメントを運営するなど、その活動が注目されている。
公開日:2021.10.09