皆さんは、「スポーツ栄養」に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか? ここでは「スポーツ栄養」について正しい認識をもっていただくため、この世界についてのお話を進めていきたいと思います。それは同時に、私がなぜ本協会を発足(2018年6月)したかという、そもそもの目的にも結び付いてくると考えます。
スポーツ栄養の歴史は平成の頃から
日本でスポーツ栄養という言葉が認識し始められたのは、今から25~30年前。つまり、それは平成に入ってからのことです。さらに遡って、アメリカでは1923年には既に「Sports Nutrition」という言葉が使われるようになっていました。この言葉が日本に入ってきた当時、どういう意味を伴っていたかといえば、「どんな栄養素を摂ればパフォーマンスが高まるか」でした。
それをいい換えれば、「パフォーマンスを高めるための栄養素はいかにして摂ればよいか」です。つまり、当時のスポーツ栄養にはサプリメントを用いた栄養摂取の方法という意味が前提として含まれており、それが欧米を発祥とする新たな考え方として導入されてきた、と考えても過言ではありません。
実際、25~30年前、私が大学を卒業する頃、ビタミンや鉄を中心に、ソフトキャンディーのような形をした食品が多数売り出され、「お菓子を食べるなら、ビタミン・タブレットを食べましょう」という時代がありました。そのとき、スポーツ現場からは、「日本の食事はとてもいいはず。にもかかわらず、食事の代わりにそういうサプリメントを摂ることによって本当に強くなるのだろうか…」という疑問の声が上がったものです。
そしてこの頃から、「スポーツ栄養に取り組んでみたい」という志しをもつ人たちが徐々に増え続けていき、2004年10月、念願だった‟日本スポーツ栄養研究会”(その後、2013年12月に‟特定非営利活動法人 日本スポーツ栄養学会”として東京都より認証される)が設立されました(その後、2007年6月に特定非営利活動法人として東京都より認証され、 2013年12月に特定非営利活動法人日本スポーツ栄養学会となった)。一方、当時からずっと思い悩んでいた課題が、スポーツ栄養とはどういうものなのか、それをより正しく普及していくための専門職の育成でした。そこで日本、スポーツ栄養研究会が中心となり、(公財)日本スポーツ協会と(公社)日本栄養士会の共同認定資格による「公認スポーツ栄養士」の養成を2008年よりをスタートしました。
そして、その次の課題として浮かび上がったのが、今度はそういった人たちが活躍する場を考えなければならないということでした。ところが、研究会や学会ではなかなかそこまでサポートすることができない。そこで、本協会を立ち上げたいという思いをずっと抱き続け、構想から10年目にしてようやく実現したというわけです。
スポーツ栄養の本質を知ろう
‟スポーツ栄養学”とは、「運動やスポーツによって身体活動量が多い人に対して必要な栄養学的理論・知識・スキルを体系化したもの」と定義づけられています。そして、このスポーツ栄養を対象者に応じて、どういうふうに提供していくかという栄養管理のシステムとして、‟スポーツ栄養マネジメント”を提唱しています。日本では、栄養管理のシステムを栄養ケア・マネジメントといって、既に病院や介護施設などで用いられていますが、それをそのままスポーツの現場に流用することはできませんでした。そこで、新たに“スポーツ栄養マネジメント”というシステムを開発したというわけです。それは、「運動やスポーツによって身体活動量が多い人に対し、スポーツ栄養学を活用し、栄養補給、食生活などの食にかかわるすべてについてマネジメントする」と定義づけています。
さらに、“スポーツ栄養マネジメント”のなかでも、アスリートに特化してマネジメントを行った場合を‟栄養サポート”といいます。
さて、スポーツ栄養を活用する対象者はアスリートだけなのでしょうか? この疑問については、次回にお答えしたいと思います。
一般社団法人 日本スポーツ栄養協会(Sports Nutrition and Dietitian Japan)
設立記念メディアセミナー 『スポーツ栄養の世界とは』
SPEACH:鈴木志保子(一般社団法人 日本スポーツ栄養協会理事長、公益社団法人日本栄養士会副会長、神奈川県立保健福祉大学 教授)
TEXT:光成耕司
公開日:2018.11.19
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