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トラウマを乗り越えるには、どうしたらいい?【脳の話】

Text:茂木健一郎

脳内にポジティブな思考回路をつくる

人は、死の危険を感じるほどの恐怖に直面すると、情動(急激な感情の動き)と記憶の調節を担う扁桃体の記憶が強化されることがあります。これが、トラウマの大本です。

トラウマとは、外部から受けた大きなショックや恐怖が原因で生じる心の傷のことで、これも脳の働きによるものです。

前触れもなくトラウマを鮮明に思い出す現象をフラッシュバックと呼び、これによって激しい苦痛を感じてしまうのが心的外傷ストレス障害(PTSD)です。

克服しようと「忘れよう」「思い出すまい」と、トラウマを抑圧すると、逆に作用し、トラウマがより強固になってしまう場合が少なくありません。

トラウマを乗り越えるためには、できるだけポジティブな回路を脳のなかにつくっていくことが、効果を発揮します。たとえば、何かを考えるとき、トラウマと結びついてしまうネガティブな回路を回避できるポジティブなルートを確保して、なるべくそちらを通るように心がけましょう。

いったんトラウマとして脳のなかにできあがった回路は簡単には消えませんが、ポジティブな回路をつくることで、これを思考のバイパスとして使うようにするわけです。

ある程度トラウマと向き合えるようになったら、自分にとってその体験がなぜトラウマになっているのか、その体験で何を感じたのか、自分の人生でそれはどういう意味をもつのか、といったことを振り返ることで、トラウマを乗り越えようとする治療法もあります。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』
著:茂木健一郎

シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「脳」について切りこんだした一冊。「なぜ、脳から意識が生まれるの?」「ひと目ぼれは、どうして起きる?」「頭がいいって、どういう人?」人の脳は不思議でいっぱい。身近な疑問でナゾを解明! いまだに解明されない現代科学最大の謎といわれる脳。脳を知ることは、自分自身を知ることです。テレビや雑誌など、さまざまなメディアで活躍する脳科学者の著者が、脳の働きや仕組みを最新のトピックスや知識を使い、図解を交えてわかりやすく解説します。脳力を最大限に発揮させる方法から、「ひらめき回路」の鍛え方、、AI時代の脳の活かし方、脳の機能まで、疑問形式で楽しく読める脳の話が満載。仕事や学習、恋愛、人付き合いなど日常の生活でも役に立つ、脳のエンターテインメント教養本です。脳は自分を映す鏡。人工知能時代に負けない、ヒトの脳の大きな可能性がわかります。

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