見知らぬ土地への旅行が脳を活性化させる
たとえば、これまで行ったことのない土地に旅行するとします。そのとき、脳にはどんなことが起こるでしょうか。
旅行の魅力といえば、見るもの、聞くもの、食べるもの、出会う人など、新しい出会いです。
新しいものとの出会いは、脳の好奇心の回路を活性化させ、ドーパミンなどの多幸感を伴う神経伝達物質を大量に分泌させます。
実は、脳の神経細胞に同じ刺激を何度も与えると、1回目にとりわけ大きく反応することが知られています。2回目、3回目と回数を重ねるごと、反応は次第に低下していきます。
その点、見知らぬ土地への旅行は、「初めて」の宝庫ですから、脳を大いに活性化してくれることは間違いありません。
また、脳の記憶を司る海馬には「場所細胞」といわれるものがあることがわかっています。これも、未知のところへ移動すると活性化します。さらに、旅行の計画を立てるときは、脳の前頭葉が活性化します。
一方で、いくら綿密な計画を練っても、旅行にはアクシデントがつきものです。旅行は、必然と偶然の間にある「偶有性」に身をさらすことになります。
脳は偶有性に対応する前提で設計されていますから、旅行は人間の脳本来の潜在能力を発揮するにも非常に有効ですし、突然の出会いや偶然の幸運を意味する「セレンディピティ」も脳を活性化してくれます。
このように旅行は、脳を活性化させますし、さらには脳を若返らせる作用も期待できるでしょう。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』
著:茂木健一郎
シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「脳」について切りこんだした一冊。「なぜ、脳から意識が生まれるの?」「ひと目ぼれは、どうして起きる?」「頭がいいって、どういう人?」人の脳は不思議でいっぱい。身近な疑問でナゾを解明! いまだに解明されない現代科学最大の謎といわれる脳。脳を知ることは、自分自身を知ることです。テレビや雑誌など、さまざまなメディアで活躍する脳科学者の著者が、脳の働きや仕組みを最新のトピックスや知識を使い、図解を交えてわかりやすく解説します。脳力を最大限に発揮させる方法から、「ひらめき回路」の鍛え方、、AI時代の脳の活かし方、脳の機能まで、疑問形式で楽しく読める脳の話が満載。仕事や学習、恋愛、人付き合いなど日常の生活でも役に立つ、脳のエンターテインメント教養本です。脳は自分を映す鏡。人工知能時代に負けない、ヒトの脳の大きな可能性がわかります。
公開日:2020.09.17