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本で知る知識より、なぜ生の体験が大事なの?【脳の話】

Text:茂木健一郎

生の体験の記憶整理が脳を鍛える

学校の「優等生」はたしかに優秀ですが、何か物足りないと感じさせるのは、生の体験が足りないからだと思います。

何が起こるかわからない、複雑怪奇な現代社会を生き抜いていくためには、生の体験が必要なのです。

「記憶」という視点から見ると、生の体験にはユニークな特性があります。それは、特定の意味に整理される以前の、言い換えれば「編集前」のノイズが豊富に含まれているということです。

書物や映像を通して得られる知識は、誰かが整理し、編集してくれたものです。もちろん、これも必要なものですが、一方で、自分で工夫し、何とか言葉にしていくという、アグレッシブな側面に欠けてしまうことになります。

生の体験の記憶は、脳の大脳皮質の側頭葉に蓄えられます。脳に蓄積された記憶は長い年月をかけて徐々に編集されます。そして、さまざまなノイズに満ちた体験から、「意味」を見出す編集作業こそが、脳を鍛え、成長させていくのです。

また、脳の記憶を司る海馬には「場所細胞」といわれるものがあることがわかっています。これも、未知のところへ移動すると活性化します。さらに、旅行の計画を立てるときは、脳の前頭葉が活性化します。

記憶は一度定着されても、そのままずっと静止しているということはありません。長い時間をかけて編集され続けるようなのです。たとえば、ずいぶん前に体験したことの記憶が突然よみがえって、その意味がふと腑に落ちることがあります。

こんなことが起こるのも、脳のなかでそのときの記憶がずっと編集され続けていたからです。

このようなことから、いくつになっても、生の体験を重ねていくことが人間にとって必要なことだといえるでしょう。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』
著:茂木健一郎

シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「脳」について切りこんだした一冊。「なぜ、脳から意識が生まれるの?」「ひと目ぼれは、どうして起きる?」「頭がいいって、どういう人?」人の脳は不思議でいっぱい。身近な疑問でナゾを解明! いまだに解明されない現代科学最大の謎といわれる脳。脳を知ることは、自分自身を知ることです。テレビや雑誌など、さまざまなメディアで活躍する脳科学者の著者が、脳の働きや仕組みを最新のトピックスや知識を使い、図解を交えてわかりやすく解説します。脳力を最大限に発揮させる方法から、「ひらめき回路」の鍛え方、、AI時代の脳の活かし方、脳の機能まで、疑問形式で楽しく読める脳の話が満載。仕事や学習、恋愛、人付き合いなど日常の生活でも役に立つ、脳のエンターテインメント教養本です。脳は自分を映す鏡。人工知能時代に負けない、ヒトの脳の大きな可能性がわかります。