本能的に脳はチャレンジをくり返している
現在は、「自分はのんびりやっていくからいいよ」という人には、生きにくい時代といえるかもしれません。しかし、そんなのんびり屋さんの脳にも、新しいことにチャレンジしたいという欲求は、本能として必ず潜んでいます。
人間は生まれ落ちたときから、新しいことにチャレンジして次々と新しいことを学んでいきます。
ですから、何も考えずのんびり過ごしていたとしても、脳は新しいことを学んでいるのです。とはいえ、積極的に挑戦したいと願うのであれば、安全基地をもつことが大事になります。
イギリスの心理学者、ジョン・ボールビー(1907‐1990年)は、子どもたちを観察するなかで、安全基地の必要性を発見しました。
子どもは、保護者が見守ってくれるという安心感があって、はじめてその探求心を十分に発揮できるというのです。一方で、その安心感を得られていない子どもは探究心が薄いことがわかったのです。
安心と探索のバランスをとることは、脳の大脳皮質の下にある大脳辺縁系を中心とする感情システムの働きによります。いつでも戻れる人や場所があるという安心感が、新しいことに挑戦する意欲を生み、感情システムの働きを活発にします。
「探索のための安全基地」の概念は、子どもだけのものではなく、大人にも当てはまります。
大人も、子どもも、探索するための安全基地が確保されていることが、積極的に挑戦する意欲をかきたて、脳を成長させるために欠かせないファクターといえるでしょう。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』
著:茂木健一郎
シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「脳」について切りこんだした一冊。「なぜ、脳から意識が生まれるの?」「ひと目ぼれは、どうして起きる?」「頭がいいって、どういう人?」人の脳は不思議でいっぱい。身近な疑問でナゾを解明! いまだに解明されない現代科学最大の謎といわれる脳。脳を知ることは、自分自身を知ることです。テレビや雑誌など、さまざまなメディアで活躍する脳科学者の著者が、脳の働きや仕組みを最新のトピックスや知識を使い、図解を交えてわかりやすく解説します。脳力を最大限に発揮させる方法から、「ひらめき回路」の鍛え方、、AI時代の脳の活かし方、脳の機能まで、疑問形式で楽しく読める脳の話が満載。仕事や学習、恋愛、人付き合いなど日常の生活でも役に立つ、脳のエンターテインメント教養本です。脳は自分を映す鏡。人工知能時代に負けない、ヒトの脳の大きな可能性がわかります。
公開日:2020.09.20