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欲求や恐怖など原始的な心をつくる大脳辺縁系【脳の話】

Text:茂木健一郎

生きていくために発達を遂げてきた「動物の脳」

これまで述べてきたように、大脳皮質は、認知、思考、判断、言語など知的で高度な精神活動を司りますが、大脳皮質の内側にある大脳辺縁系は、食欲、性欲などの欲求、快不快や恐怖などの無意識にわいてくる原始的な感情を司ります。

同じ大脳でも、知的な働きを担う大脳皮質は、新皮質と呼ばれ「人間ならではの脳」といわれますが、これに対し、原始的な大脳辺縁系は、旧皮質・古皮質と呼ばれ「動物の脳」といわれます。

大脳辺縁系は、進化の古い段階にできた脳で、進化の過程で人間がたどってきた爬虫類や旧哺乳類がもつ脳が残っています。大脳辺縁系にある海馬は爬虫類の時代から残る古皮質に、同じく扁桃体や側坐核は旧哺乳類の時代から残る旧皮質に属します。

大脳辺縁系は、左右の脳をつなぐ脳梁を取り囲むように存在し、帯状回、側坐核、扁桃体、海馬などの部位から構成されます。そして、それぞれ左ページに示したような働きをもっています。

どれも動物が生きるうえで、欠かせない働きです。動物実験で、扁桃体がなくなったサルは恐れて遠ざからなければならない天敵のヘビに対して、無関心になってしまいました。

また、海馬が傷ついた人は、昔の記憶は覚えていても、新しいことが覚えられなくなってしまうことがあります。

なお、大脳辺縁系の近くには、臭いの情報処理をする嗅球などの嗅脳
が存在しており、臭い情報は海馬や扁桃体にも伝わり、記憶や感情が呼び起こされることがわかっています。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』
著:茂木健一郎

シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「脳」について切りこんだした一冊。「なぜ、脳から意識が生まれるの?」「ひと目ぼれは、どうして起きる?」「頭がいいって、どういう人?」人の脳は不思議でいっぱい。身近な疑問でナゾを解明! いまだに解明されない現代科学最大の謎といわれる脳。脳を知ることは、自分自身を知ることです。テレビや雑誌など、さまざまなメディアで活躍する脳科学者の著者が、脳の働きや仕組みを最新のトピックスや知識を使い、図解を交えてわかりやすく解説します。脳力を最大限に発揮させる方法から、「ひらめき回路」の鍛え方、、AI時代の脳の活かし方、脳の機能まで、疑問形式で楽しく読める脳の話が満載。仕事や学習、恋愛、人付き合いなど日常の生活でも役に立つ、脳のエンターテインメント教養本です。脳は自分を映す鏡。人工知能時代に負けない、ヒトの脳の大きな可能性がわかります。