専門家でも難しい心の病気の診断
人は誰でも大小さまざまな悩みやストレスなどを抱えているものです。そのことが原因で、ひどく気分が落ち込んだり、イライラしたり、怒りっぽくなったりしてしまうことがあるかもしれません。しかし、そのことをもって、心の病気だと判断するのは早計です。
なぜなら、心の病気は専門家でも診断が難しいからです。たとえば、身体の病気であれば、科学的な根拠に基づいた診察や検査をすることで、病気を特定し、薬物治療や手術といった方法で適切な治療を行うことができます。
しかし、心の病気はそうした科学的な根拠に基づいた診察や検査が難しく、患者さんの訴える症状や心理的アセスメントなどから得る情報、心理検査といった経験や統計に基づいた診断しかできません。さらに、心の病気は同じ症状でも原因はさまざまです。たとえば、「気分が落ち込む」という症状があった場合、可能性がある心の病気は、うつ病、双極性障害、統合失調症など多岐にわたります。
さらに、心の病気は重複していたり、時間経過で症状が変わったりすることがありますし、症状もその軽重も個人差が大きく、専門家でも正確な診断には時間がかかりますし、その診断が正しいのかどうかの判断も難しいのです。それを素人が判断しようとしても、できるわけがありません。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 臨床心理学』監修/湯汲英史
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 臨床心理学』
監修:湯汲英史
ADHDや学習障害、統合失調症やパニック障害などの言葉を耳にする機会はありますが、なんとなく心やメンタルの不調・病気と捉えてしまいがちな臨床心理学の分野。しかし紐解いていくと実はそれぞれの症状には特性や原因があり、子どもが抱えやすいのものから大人が抱えやすいものまで様々です。また、ストレスが原因で自分では気づかないうちに発症してしまうものも。本書ではそんな一見理解し難い「心の問題」の特性や症状を図解でわかりやすく解説します。最も大切なことはしっかりと特性を理解して自分と、そして他人と向き合うことです。「自分は他人がふつうにできることができない」「職場のあの人はどうも変に感じる」「子どもがじっとしていてくれない」こうした日常のもやっとした感情も、臨床心理学を知ることで理解が深まります。また、実際に現場で心の病気を抱えた人と向き合う公認心理士師の仕事についても紹介します。臨床心理学を通して「心の問題」について知ることで、自分や他人の特性がわかり、周囲と上手に付き合っていく方法を知ることができる一冊です。
公開日:2023.05.10