生き物はなぜ老化するのか?
とても大きな疑問(不思議)です。ただ、この問題は、最近まであまり考えられていませんでした。その理由は、150年位前の19世紀(江戸末期から明治時代)には、人々はおおよそ50歳ぐらいで亡くなっていたからです。50代は、まだまだ働き盛りの年齢ですが、当時は生命を脅かす肺炎や結核が猛威をふるい、多くの方が感染症で亡くなっていました。それにヒトは50歳を超えると、誰にでも「老い」が目立つようになるため、若者は老化をあまり意識していなかったようです。
20世紀に入ると、医療(特効薬の発見)、衛生、栄養などの生活環境が飛躍的によくなり、寿命がどんどん伸びました。ご承知のように、今では男女ともに平均寿命は80歳を超えています。さて、そうなると「老化」が生活の諸問題になりました。同時に老化を考える学問もはじまり、ヒトは「生き物(ヒト)はなぜ老化するのか」と考えるようになりました。多くの学者先生の意見をとりまとめると、「死にやすくするため」が答えです。
実際に年齢と死亡率を比較してみると、図に示されているように50歳を超えるあたりから徐々に死亡率が高くなり、80歳を超えると急上昇します。つまり、歳を重ねると死にやすくなるのです。ではなぜ、「歳を取ると死にやすくなるのか?」。その疑問に関しては、次項から順に説明していくことにします。また、「死」を意識すると、「なぜ生き物(ヒト)は死ぬのか?」の問いも湧いてきます。その正確な答えは誰にもわかりません。ですが、「生き物の進化の歩みの中で獲得した特性」と考えることができるでしょう。
地球上には私たちが生活する温帯地域から極寒地域、空気の薄い高地から深海に至るまで生き物は生存しています。多種多様なやり方で「生」と「死」を繰り返しながら「種」を保ち、未来に向かって子孫を残そうとしているわけです。「死」がある限り「老化」も避けられません。この事実は、すべての生き物に見られる現象なのです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』監/長岡功 野村義宏
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』
長岡 功 総監修/ 野村 義宏 監修
高齢化や平均寿命が伸びた社会では、「老化」は誰もが避けられない、しかし誰もが可能な限り抗いたいテーマ。その多くは人体の「老化現象」、またそれに伴う「諸症状」として、完全には克服できないまでも、原因やしくみを知ってうまく対応すれば、症状を「やわらげる」ことや、日常生活での「影響を少なくする」こと、また「目立たなくする」ことが可能である。本書では具体的に、老化にともなう病気・諸症状の原因に言及し、その対処・対策法を解説、紹介する。中高年以降の健康と美容の悩みを楽しく読めて、一気に解決する一冊です。
公開日:2023.03.01