細胞も老化をする
身体を構成する「細胞も老化する」と聞いたら驚きますか。私たちの体は270種類の細胞が約37兆個集まってつくられているのです。形や役割もさまざまですが、いちばん多い細胞は血液の“赤血球”。全体の3分の2を占めるといいます。その多さからみても、血液が酵素を体じゅうに運ぶことがいかに大切かわかります。
19世紀には、すでに体は細胞で構成されていることはわかっていましたが、「体は老化するが、細胞は老化しない」と考えられていました。その後、細胞を個体から取り出してシャーレ上で栄養を与え、培養することに成功しました。当初は、個体から取り出した細胞は、無限に分裂して増え続けると考えられており、そうした解釈が長らく支持されていたのです。
ところが、1961年に米国のヘイフリック博士が新説を提唱しました。細胞には分裂限界があるとした「複製老化」の概念です(下図)。
その説は確立され、染色体末端の“テロメア構造”の短縮(回数券説)が老化を進めることが証明されたのです(下図)。
さらに、放射線や紫外線のさまざまなストレスでも細胞は老化するとの「細胞老化の特徴」も明らかとなり、有力な説となりました。ですが、確認されたのは、体から取り出した細胞の特性であって、私たちの体の中の状況とは異なるのでは、と長らく論争が続いたのです。それでも科学技術の進展によって、「老化細胞は体の中の至るところにいる。歳を重ねると老化細胞数が増える。体にとって悪い因子(細胞老化関連分泌形質=SASP)を分泌して慢性炎症を引き起こし、体全体に悪影響を与える」ことが明確化していきました。
きわめつけは、老化した細胞を選択的に殺す方法が見つかったことです。その処理によって老化を遅れさせることが動物実験で判明しました。現在、ヒトでの検証実験が進んでいて、ホットな話題となっているのです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』監/長岡功 野村義宏
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』
長岡 功 総監修/ 野村 義宏 監修
高齢化や平均寿命が伸びた社会では、「老化」は誰もが避けられない、しかし誰もが可能な限り抗いたいテーマ。その多くは人体の「老化現象」、またそれに伴う「諸症状」として、完全には克服できないまでも、原因やしくみを知ってうまく対応すれば、症状を「やわらげる」ことや、日常生活での「影響を少なくする」こと、また「目立たなくする」ことが可能である。本書では具体的に、老化にともなう病気・諸症状の原因に言及し、その対処・対策法を解説、紹介する。中高年以降の健康と美容の悩みを楽しく読めて、一気に解決する一冊です。
公開日:2023.03.04