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老化すると誤嚥性肺炎が増えるって本当?防ぐには時々咳き込むことがポイント【図解 老化の話】

Text:長岡功 野村義宏

老化すると食べ物が気管に入りやすくなる

飲み込んだ食べ物が気管に入る(誤嚥)ことがあります。その結果、飲み込んだものと一緒に細菌が肺に入って炎症を起こすのが“誤嚥性肺炎”です。この肺炎が歳を重ねるとともに増加する、これはその通りでしょう。ですが、“嚥下反射”が障害されていても“咳反射”が保たれている高齢者では肺炎が起きないとの報告があります。

さて、聞き慣れない嚥下反射・咳反射という言葉が出てきました。嚥下反射の意味は「食べ物を飲み込むときに口腔内が密封された一瞬に起こる反射運動」のこと、簡単にいえば食べ物を飲み込むときの反射です。咳反射は、気道内に溜まった異物などを気道外に排除するため、肺内の吸気を一瞬にして流出させる生体防御反応ですね。嚥下と咳嗽の2つに障害が起こると嚥下性肺炎を発症する、というわけです。

誤嚥性肺炎のリスクファクターとして、いわゆるフレイル(虚弱・frailty)、脳血管障害(特に基底核の脳梗塞)、認知症、日常生活動作(ADL)の低下、睡眠薬服用などがあります。もともと老化すると食事中や食度に咳き込みやすくなることは確認されていましたが、頻繁に起こるのであれば前記リスクファクターの有無を確認してください。特に脳MRIは必須で、誤嚥の診断には嚥下造営検査(VF)を行ないます(下図)。

予防として以前から注目されているのが、ACE阻害剤という降圧剤の投与です。ACE阻害剤によってサブスタンスPレベル(神経伝達物質)が上昇すると、咳を増やし嚥下反射を改善すると見込まれているからです。要するに、咳を頻発させて誤嚥性肺炎を防ごう、ということですね。咳払いをせずとも、日常的に大きく息を吸って思い切り息を吐く動作をすることには意味がありそうです。

ところで、高齢者の肺炎は熱が出ないと、やたら強調される方がいますが、それは間違いです。大部分の患者さんは発熱します。病態が進んで寝たきりになり、自分の唾液を絶えず少しずつ誤嚥してる患者さんでは、熱が上がっても37.5℃程度の発熱しかしないかもしれません。

ですが、酸素飽和度の低下(正常値は室内気で97~98%)、パルスオキシメーター(酸素飽和度計)がなくても、呼吸が速くないか(自分の息の速さと比べてみるのがいちばんわかりやすい)、あるいは脈が速くないか(1分間に90以上は頻脈)を確かめることで肺炎を疑うことができます。高齢者の場合、発熱を契機に脱水や低酸素血症になって、心拍数が増加し、心房細動を誘発して心不全になることがしばしばあるので、細心の注意が必要なのです。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』監/長岡功 野村義宏

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』
長岡 功 総監修/ 野村 義宏 監修

高齢化や平均寿命が伸びた社会では、「老化」は誰もが避けられない、しかし誰もが可能な限り抗いたいテーマ。その多くは人体の「老化現象」、またそれに伴う「諸症状」として、完全には克服できないまでも、原因やしくみを知ってうまく対応すれば、症状を「やわらげる」ことや、日常生活での「影響を少なくする」こと、また「目立たなくする」ことが可能である。本書では具体的に、老化にともなう病気・諸症状の原因に言及し、その対処・対策法を解説、紹介する。中高年以降の健康と美容の悩みを楽しく読めて、一気に解決する一冊です。

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