最近動悸が多いなと感じたら、老化のサインかも
“動悸”の語源はドキドキの「ドキ」、つまりは「ドキ」を漢字に当てはめたものが動悸です。動悸は中国語の心悸と同じ意味です。そのため以前の日本の小説の中では、動悸のことを「心悸亢進」と書いていた時期がありました。さらに、驚悸という同じ意味の言葉があります。これら動悸・心悸・驚悸に共通する漢字の「悸」には、「おそれ=おそれる」で心が乱されている状態を意味しており、驚悸は外からの「驚き」と内からの「おそれ」が合わさった状態を意味したのです。
動悸とは本来、病気に関係する状態を表現する言葉として使われることが多いですが、「おそれ」に関係する感情を表現していることも少なくありません。さて、ここから本項のテーマになりますが、「動悸は老化に関係しているのか」という問いかけでしたね。確かに動悸を感じる原因の1つに老化があります。老化と聞くと、見た目の変化や身体機能の衰えに目が向きがちですが、年齢を重ねることは心にも大きな変化を生じさせます。
見た目が変化していくことにストレスを感じたり、身体機能が衰えていくことにもどかしさを感じたりすることは、心に変化を生じさせる要因です。その他にも、日常生活や社会環境の変化からくる孤独感や不安感は、感情のコントロールをむずかしくしてしまい、結果的に老化を原因とした心の変化を生んでくるのです。
海馬という名前をご存じでしょうか。脳にある器官で記憶や空間学習能力をつかさどっています。脳の海馬の名前は、英語名がsea horse(うみうま=海・馬)であるタツノオトシゴに形が似ていることから名付けられたとされています。人は生まれてから今までの出来事すべてを、脳のどこかにインプットしたまま残しているといわれています。老化する、すなわち年齢を重ねていくということは、今まで経験してきた多くの記憶が脳の中に蓄積されていることになります。つまり、海馬に蓄積されているわけです。
この蓄積された記憶は良いものばかりではなく、過去に起きた悪い記憶も含まれます。そのため、この悪い記憶の中には、「おそれ」を生んでしまうきっかけが潜んでいるわけです。ポジティブシンキング(前向き思考)の大切さは、多くの書籍で述べられています。この思考法は、起こらないかもしれないネガティブな記憶の蘇りを防ぐのに適している方法で、記憶の蓄積からくる「おそれ」にも対応することができます。つまり、年齢を重ねるほど記憶の蓄積という老化は進みますが、「おそれ」の感情をコントロールできれば、結果的に動悸を防ぐことにつながっていくのです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』監/長岡功 野村義宏
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』
長岡 功 総監修/ 野村 義宏 監修
高齢化や平均寿命が伸びた社会では、「老化」は誰もが避けられない、しかし誰もが可能な限り抗いたいテーマ。その多くは人体の「老化現象」、またそれに伴う「諸症状」として、完全には克服できないまでも、原因やしくみを知ってうまく対応すれば、症状を「やわらげる」ことや、日常生活での「影響を少なくする」こと、また「目立たなくする」ことが可能である。本書では具体的に、老化にともなう病気・諸症状の原因に言及し、その対処・対策法を解説、紹介する。中高年以降の健康と美容の悩みを楽しく読めて、一気に解決する一冊です。
公開日:2023.03.18