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耳が聞こえにくくなるのも老化のせい!?耳の構造と聞こえの老化とは【図解 老化の話】

Text:長岡功 野村義宏

難聴での影響は多岐にわたる

音は耳から聞こえています。ご承知のように耳の聞こえが悪くなることを「難聴」といますね。果たして、それは老化のせいなのかどうか・・・・・・。耳は“外耳”(耳介から耳の穴、鼓膜まで)、“中耳”(鼓膜の奥の空洞)、“内耳”(聞こえやバランスを担当するセンサー)で構成されています(下図)。難聴は2つに分かれていて、外耳や中耳に問題があった場合の難聴は「伝音難聴」、内耳かそれより奥(聴神経や脳)に問題があった場合の難聴は「感音難聴」と呼ばれます。

耳の構造と聞こえの老化

では、老化によって難聴は起きるのか。答えは「起きる」です。そんな老化で起こる加齢性(老人性)難聴は、感音難聴なのです。内耳には“蝸牛”という聞こえを担当する器官があります。かたつむりの殻のような形をしているために蝸牛というわけです。このかたつむりの殻の入り口側(太いほう)から奥のほう(細いほう)へ向かって、高い音から低い音を担当する毛の生えた細胞(有毛細胞)がピアノの鍵盤のように順番に並んでいます。有毛細胞には、音の感知や増幅するなどの働きがあるのですが、老化によって細胞の数が減ったり毛が抜けたりして、徐々に機能が低下していきます。また、内耳と脳をつなぐ神経や脳の働きに変化が起こることも、加齢性難聴に関連します(下図)。

多岐にわたる難聴での影響

加齢性難聴は、主に高い音から進んでいくために、日本語では最初に「か行」「さ行」「は行」などの音から聞こえづらくなります。その反面、母音である「あいうえお」は低い音なので、比較的聞こえやすいままなのです。難聴が進むと、さまざまな要因により「音は聞こえるのだけれど、何をいっているかわからない」という問題も起こります。加齢性難聴は、軽いものを含めると、65歳以上の約3割、75歳以上の約半分、85歳以上の約8割に起こっています。「より高齢であること」「騒音」「男性」「喫煙」「糖尿病」や「動脈硬化」などにより加齢性難聴が起こりやすくなります。

今のところ、「不老不死を実現した人はいない」ですね。そうすると、程度や進み具合に個人差があっても、残念ながら加齢性難聴はほとんどの人に起こります。難聴が進んでくると、周りの人とのコミュニケーションがむずかしくなりがちです。そうすると、人とあまり会話しなくなってしまい、孤独をかこつ方が増えたり、落ち込んだりする。また、人との会話がなく、孤独になると、最近では認知症になりやすいともいわれています。そのうえ、たとえば車の音がよく聞こえなければ、事故の恐れもあるわけです。加齢性難聴は、家族や友人など周りの人が気づいていたにしろ、本人はあまり自覚していなかったり、自覚することを拒む方もおられます。自分自身の老化現象を認めるのは、尊厳にもかかわるためになかなかむずかしいかもしれません。

加齢性難聴に対しては、幸い補聴器などである程度対応できるので、利用したほうが「生活の質(QOL)」を保つことになるでしょう。また、歳を重ねたための加齢性難聴ではなく、もしかすると難聴を引き起こす病気が隠れていたのかもしれません。難聴を自覚したのなら、とにかく「歳だから仕方がない」とあきらめずに、人とのよりよいコミュニケーションを取るためにも、認知症を防ぐためにも、おっくうがらずに耳鼻咽喉科で相談してみてはいかがでしょうか。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』監/長岡功 野村義宏

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』
長岡 功 総監修/ 野村 義宏 監修

高齢化や平均寿命が伸びた社会では、「老化」は誰もが避けられない、しかし誰もが可能な限り抗いたいテーマ。その多くは人体の「老化現象」、またそれに伴う「諸症状」として、完全には克服できないまでも、原因やしくみを知ってうまく対応すれば、症状を「やわらげる」ことや、日常生活での「影響を少なくする」こと、また「目立たなくする」ことが可能である。本書では具体的に、老化にともなう病気・諸症状の原因に言及し、その対処・対策法を解説、紹介する。中高年以降の健康と美容の悩みを楽しく読めて、一気に解決する一冊です。

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