白髪の仕組み
古代ローマ時代の平均寿命は26歳といわれています。20~25歳ほどという説もありますが、いずれにしろ短命です。乳幼児の段階で死ぬことが多かったため平均余命が短くなったわけですね。その古代ローマ時代のミイラの頭髪を調べると、茶褐色。これは毛髪中のメラニンが酸化したからです。ところで、野生動物の多くは短命なので白毛交じりにはなりません。ただし、たまに老齢犬が白髪交じりになっているのを見かけます。そう考えると、ヒトの白髪も寿命が延びたためなのか、と考えたくなります。ホントにそうなのでしょうか。
毛髪は、メラニン色素と大いに関係しています。メラニンが多く、色素が全体に分散していると黒髪になり、メラニンが少なく、色素が全体に分散しているとブロンドになり、メラニン色素をほとんど含まなければ白髪になります(下図)。
白髪は、色素幹細胞はなくなって色素細胞に分化できなくなり、毛包の根元にメラニンを供給できなくなることが原因です。老化にともない色素幹細胞の遺伝子が損傷し、幹細胞が消失する。これが白髪の原因(下図)なので、やはり老化が関係しているわけです。
でも、歳を取っても黒々とした髪の老人がいます。それはどういうことか。やはり、白髪もハゲと同じで遺伝するのかもしれません。毛髪に関しての調査報告があります。南米5か国(ブラジル、コロンビア、チリ、メキシコ、ペルー)で6630人の遺伝子解析を行なったものです。対象者の頭髪、眉、髭の形質と特徴と相関を調査した結果、白髪にかかわるIRF4という遺伝子を発見したと報告されました(Nature communications,2016)。
また、その論文では、「巻き毛は、人類が初期に進化した高温の赤道直下地帯では、特に脳を常に冷却する助けになると考えられる」との説明があり、「直毛については、人類が北や南に移動し、より寒冷な気候に適応したことに由来するのかもしれない」と考察しています。こうした調査報告から推測すると、白髪は老化が大きな要因となるが、加えて毛質を含めて遺伝する。これは確かなようです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』監/長岡功 野村義宏
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』
長岡 功 総監修/ 野村 義宏 監修
高齢化や平均寿命が伸びた社会では、「老化」は誰もが避けられない、しかし誰もが可能な限り抗いたいテーマ。その多くは人体の「老化現象」、またそれに伴う「諸症状」として、完全には克服できないまでも、原因やしくみを知ってうまく対応すれば、症状を「やわらげる」ことや、日常生活での「影響を少なくする」こと、また「目立たなくする」ことが可能である。本書では具体的に、老化にともなう病気・諸症状の原因に言及し、その対処・対策法を解説、紹介する。中高年以降の健康と美容の悩みを楽しく読めて、一気に解決する一冊です。
公開日:2023.03.29