サイコパス投資家は諸刃の剣
サイコパスが力を発揮する場として、投資もそのひとつに挙げられます。大きな資金を動かす状況において、普通はプレッシャーに負けて守りに入ってしまいがちですが、サイコパスは感情に左右されず冷静に利益を追求することができます。
たとえばコツコツと利益を重ねて資産が増えてきたとき。たいていの人はだんだん冒険をしなくなり、できるだけリスクの低い運用になりがちです。また、持っている銘柄が少しでも値上がりすると、早く利益を確定したくてすぐに売ってしまうことが多くなります。儲けをさらに追求するよりも、いまある勝ち分を失いたくない……という心理が、そうした行動を取らせるのでしょう。
一方、サイコパスはそのような感情が薄く、さらに利益を求めてどんどんリスクを冒す傾向があるのです。それまでの収支に関わらず、儲けるチャンスがあれば冷静に資金をつぎ込みます。その結果、大きなリターンを得ることがあるわけです。
米国で3大学の共同チームが2005年に興味深い研究をしました。コインを投げて表か裏かを賭けさせ、当たれば掛け金を2. 5倍返し、負ければ掛け金を没収するというものです。ほとんどの参加者は手元の資金が増えるにつれ守りに入りましたが、サイコパスは最後まで賭け続けて大きな利益を手にしたそうです。ただし、大金を賭け続けて破産したケースもあったとか。大成功する者もいれば無一文になる者もいる……サイコパス投資家は諸刃(もろは)の剣(つるぎ)といえそうです。
【書誌情報】
『あなたの近くの危険な人物 図解 サイコパスの話』
著:名越康文
サイコパスとは、犯罪を平然と犯す、平気でウソをつき人を欺き騙すなど「反社会的な人格」を持つ人を指す。感情に乏しく、「共感性」がない「冷徹」な人間で、人を支配したがり、目的のためには手段を選ばないーーそんな人間があなたのまわりにもきっといる!本書は心理学の面に焦点をあて、社会にまぎれ、職場、学校、サークルなどあらゆるコミュニティに、100人に1人の割合で存在すると言われるサイコパスを、よりわかりやすく図解する1冊。
公開日:2021.09.29