筋肉量を増やせばエネルギーの消費も上がる
エキセントリック運動は体脂肪を減らし、ひき締まった体をつくるのに効果的です。体脂肪を減らすには、体に取り込む「摂取エネルギー」よりも、生命活動や運動で使う「消費エネルギー」を大きくしなければなりません。1kgの体脂肪をエネルギーに換算すると、約7200キロカロリーです。例えば1か月でこれを落とすとすれば、食べる(摂取)量を減らすか、摂取カロリーよりも毎日240キロカロリー多く消費する必要があります。ところが、体重60kgの人が全身の筋肉を使うエキセントリック運動を約1時間行っても、消費できるのは150キロカロリーほど。運動だけで体脂肪を減らすのは意外に大変なことなのです。
そこで注目したいのが、筋トレによる筋肉量の維持、増加です。私たちが消費するエネルギーのうち、その60%を占めるのが基礎代謝です。これは何もしていないとき(安静時)でも、生きるために消費しているエネルギーのこと。その消費量(基礎代謝量)は筋肉量に比例します。つまり、筋肉量を増やせば基礎代謝量が上がり、自然と消費されるエネルギーも多くなるのです。
しかも筋肉は熱を作り出すため、多くのエネルギーを必要とします。その消費量は基礎代謝量の2割以上を占めるほどです。そして筋肉の中でも速筋は遅筋に比べて、より大きなエネルギーを消費することがわかっています。
こうしたことを考え合わせると、速筋を鍛えるのに有効なエキセントリック運動を実践すれば、効率よく多くのエネルギーが消費でき、体脂肪を減らすことができそうです。さらにそこへ基礎代謝の働きが加われば、相乗効果で「太りにくい体」をつくることができるでしょう。
【書誌情報】
『ゆ〜っくり座れば、一生歩ける!』
著:野坂和則
一生歩ける足腰はゆ〜っくり座ることで鍛えられる!「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」である健康寿命は、男性は約72歳、女性は約74歳です。誰でも歳をとるにしたがって身体機能は衰えていきますが、その衰え方には大きな個人差が。その個人差の要素のひとつが「運動」です 。運動をしている人とそうでない人では、健康寿命に大きな差が出てきます。運動といってもいろいろありますが、健康寿命を高めるには脚の筋力を維持し、向上させる筋力トレーニングが必須です。しかし、そうは言っても普通の筋トレはつらそうだし、なかなか重い腰が上がらない……という方にこそ実践して頂きたいのが本書で紹介している「エキセントリック運動」です。ゆ~っくりイスに座る時、大腿の前側の筋肉は伸ばされていきます。これが典型的なエキセントリック運動です。本書では、自宅でできるエキセントリック運動を紹介しており、どうしてエキセントリック運動が一生歩けるような足腰をつくるのに適しているのか解説しています。試しに、ゆ~っくりイスに座ってみて下さい。それだけでもかなり脚に効いていることがわかるはず。つらくないのに効果は絶大――。エキセントリック運動をすれば、10年分の筋力低下を、たった2ヵ月で元に戻すことも可能です。転ばぬ先の杖、一生歩ける体でいられるように、今日から準備を始めましょう。高齢者の方はもちろん、家族全員でぜひ読んで頂きたい一冊です。
公開日:2020.02.27