整然と躍動しているチームはそれだけで迫力がある
戦場に出向くにあたり、指揮官は兵に作戦の子細を説明する必要はなく、むしろ避けるほうが賢明である。
兵に知らせるのは最終的な目的だけ。逃亡兵や敵への内通者が出ても作戦に支障を来きたさぬよう、最低限のことしか知らせず、進路を何度も変えて攻撃地点がどこになるかもわからなくさせる。軍を率いるには、それほど慎重な姿勢が必要である。
指揮官には全軍を一糸乱れることなく操縦する才も求められる。突出する者や勝手に後退する者が出ては、全軍に悪影響を及ぼすからだ。そのためには指揮系統を明確にすると同時に、口頭では離れた位置に待機する兵の耳には届かないから、太たい鼓こや鐘に加え、旗や幟をも併用する。
整然と行動する軍隊はそれだけでも相手を震え上がらせるに充分。敵軍の統制が緩ければ、鐘の音や旗の合図だけで粛々と前進して来る敵軍を見るだけでも、たちまち全軍に動揺が走る。
万全であった守備にも綻ほころびが生じるはずなので、そこを攻めれば必ず戦局の打開につながる。
この策が成功するかどうかは、指揮官が兵の心を一つにすることができるかどうかにかかっており、リーダーとしての資質が大いに問われる局面である。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 孫子の兵法』
著者:島崎晋
新紀元前500年頃、孫武が勝負は運ではなく人為によるとし、その勝利の法則を理論化した兵法書。情報分析や見極め、行動の時機やリーダー論等、現代に通じるものとして今も人気が高い。「名言」を図解でわかりやすく紹介する。
公開日:2021.08.22