運動には物理があふれている!
動物は、時に信じられないような体の動きを見せることがあります。その秘密に迫るために、ちょっと調べることにしましょう。さて、初歩からですが、生物は「脊椎動物」と「無脊椎動物」に大きく分けられます。脊椎動物というのは、魚類、両性類、爬虫類、鳥類、哺乳類です。これらは体内に形成される背骨を中心とする骨格と、そこに付いている筋肉によって運動します。
無脊椎動物は、ウニを代表とする棘皮動物、昆虫・エビ・クモ・ムカデなどの節足動物、イカ・貝などの軟体動物、ミミズを代表とする環形動物、回虫などの線形動物です。これらを大きく分けると、体を覆う硬い殻(外骨格)を持つ節足動物、甲殻類、昆虫、多足類と、柔らかい体そのものである軟体動物のイカ、タコ、ナメクジ、クラゲに分けられます。脊椎動物と外骨格を持つ動物の運動は、骨または外骨格とそれに付いた筋肉によって決まります。基本的運動は、骨のリンク機構とそれに付いた筋肉の収縮です。筋肉の収縮は、筋繊維を構成するアクチン・ミオシンタンパク質のフィラメントによります。
神経細胞から指令を受けて筋原線維周辺にある筋小胞体からカルシウムイオンCa2+が放出され、アクチンとミオシン頭部の結合を促します。ミオシンとの結合数が増えていくと、アクチンを引き寄せるために、3・7㎛(マイクロメートル)の長さの筋原繊維が、およそ1・4㎛収縮します。縮み率は38%です。このとき、Z板間に入っているタイチンは、バネの働きをするタンパク質が縮んでエネルギーを蓄えます。筋原繊維が元の長さに戻る(弛緩する)とき、このバネの力で戻ります。
弛緩には、筋小胞体がCa2+(カルシウム)回収し、アクチン・ミオシンの結合を開放します。イオンチャンネルの開閉やミオシンのアクチンを引っ張る力のエネルギー源は、筋細胞内のミトコンドリアによってつくられるATP(アデノシン3リン酸)です。ATPが加水分解によりADP(アデノシン2リン酸)と、リン酸基に変化するとき放出するエネルギー31kJ/molがエネルギー源となります。骨もしくは外骨格に付いた筋肉によって引き起こされる運動は、「てこの原理」を用いて骨で構成されるリンク機構の運動となります。軟体動物では、ミミズを例にとると、体節ごとに細かなスパイク状の剛毛が後方向きに生はえており、これが接地面に引っかかる。それを起点として体の蠕動運動で進むことができるわけです。そして、体節の蠕動は、筋肉によって行なわれます。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』著/望月修
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』
著:望月修
物理学は、物質の本質と物の理(ことわり)を追究する学問です。文明発展の根底には物理学の考えが息づいています。私たちの生活の周辺を見渡しただけでも、明かりが部屋を照らし、移動するために電車のモーターが稼働し、スマートフォンの基板には半導体が使われ、私たちが過ごす家やビルも台風や地震にも倒れないように設計されています。これらすべてのことが物理学によって見出された法則に従って成り立ち、物理学は工学をはじめ、生命科学、生物学、情報科学といった、さまざまな分野と連携しています。……料理、キッチン、トイレ、通勤電車、自動車、飛行機、ロケット、スポーツ、建築物、地震、火山噴火、温暖化、自然、宇宙まで、生活に活かされているもの、また人類と科学技術の進歩に直結するような「物理」を取り上げて、わかりやすく図解で紹介。興味深い、役立つ物理の話が満載の一冊。あらゆる物事の原理やしくみが基本から応用(実用)まで理解できます!
公開日:2023.06.23