自己責任と判断すると人は援助しない
退避勧告が出ているにも関わらず、独自で紛争地帯に行った人が武力勢力に拘束された際、「自己責任だ」と言われ批判の対象になったことがありました。
このように人が援助を行うかどうかを判断する上では、「その事態が起きた原因がどこにあるか」ということも大きな要因となります。
こうした自己責任の心理については、250名の学生を対象に行ったパメラ・ドウリーの実験によっても証明されています。
この実験では、まず参加者たちにHIVと診断された患者についての物語を読んでもらいます。この物語は全部で5パターンあり、いずれもHIV患者の話ですが、それぞれ感染した原因が異なっています。
その後、参加者にこの患者を援助したいかをたずねたところ「輸血によって感染した」というパターンの物語を読んだ参加者たちは患者への援助を申し出たのに対し、「性交渉やドラッグで感染した」というパターンの物語を読んだ参加者たちは感染したのは自業自得であると考え、援助を申し出ませんでした。
同じHIV感染という事態でも、その原因が本人にない場合は同情が生じ、逆に本人に原因があると判断した場合は嫌悪感が生じることで、援助行動に大きな差が出るわけです。
これはある意味予想通りの結果といえるかもしれません。というのも、私たちの中には「本人の不注意や軽率な行動が原因で起きた問題は、本人が解決すべきである」という考えが存在しているからです。責任の有無は人の心理に極めて大きな影響を及ぼすのです。
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多数派の意見に同調してしまうのはどうして?
日本人はよく多数派に同調しやすい、そんなイメージがあるかもしれません。しかし、この傾向はどんな人にも当て余る普遍性を持ったものなのです。なぜ私たちは多数派の意見に同調しやすいのでしょうか?この同調について、有名な実験があります。
この実験はカード①に描かれた線と同じ長さのものを、カード②に描かれた3本の線の中から選ぶというもので、実験には8人の学生が参加しました。回答はひとりずつ順番に行いますが、実は参加者のうち7人は〝サクラ〞で、あらかじめどの線を答えるかを指定されていました。
明らかに間違った答えでも多数派に同調してしまう
この実験の目的は、多数が間違った回答をした場合、被験者はそれに同調するかを調べることで、被験者は7人のサクラの回答を聞いたあと、8番目に回答します。実験は線の長さを変えながら複数回行われましたが、問題自体はいずれもひとりで回答したときは正解率99%というごく簡単なものでした
ところが、7人全員が誤った回答をした条件下だと、被験者による誤答率は32%にも上りました。普通なら間違えようのない問題でも、全員が別の回答を選ぶと、それに大きく影響されてしまうことが明らかとなったわけです。なお、7人のサクラのうち、必ず正解を答える他者がひとりいた場合、被験者の誤答率は5・5%まで低下しました。
会社の会議などでも全員一致の意見に反対するのは勇気がいりますが、ひとりでも反対者がいれば意見を表明しやすくなります。同調を促うながすには全員一致であることが重要で、ひとりでも自分と同じ意見の人がいると、その圧力は大きく弱まるというわけです。
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監修:亀田達也
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公開日:2023.06.03