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間違った答えに多くの人を導いてしまう「プロセス・ロス」の問題とは!?【社会心理学】

Text:亀田達也

正解者がいても間違った答えにたどりつくのはなぜか

私たちはひとりがすべてを決定する独裁よりも、グループで話し合いを行う民主的な決定のほうが好ましいと考えています。私たちは集団は個人よりも優れた判断ができると信じがちですが、実は必ずしも集団は個人に勝るとは限りません。

たとえば、5人グループに課題を解いてもらう実験では、グループの中に正解者が1人でもいれば、集団による協議の答えも必ず正解にたどりつけそうですが、実際は正解者が1人の場合は27%、2人の場合は8%、3人の場合は4%の確率で間違った答えを導き出し、4人いて初めてグループとしても100%の正解率にたどりつきました。

このように正解者がいるにも関わらず、グループとして間違った回答にたどりつくのはなぜでしょうか。その理由としては「プロセス・ロス」の問題が指摘されています

たとえば、グループでの話し合いでは、発言できるのをメンバーのひとりに限ると、いいアイデアを思いついても、それをよいタイミングで発言できないといったことがしばしば起きます。これによって思考が停止しやすくなり、せっかくのアイデアも生かされにくくなるわけです。

また、「他の人に任せておけばいいか」といった手抜きも起きやすくなります。こうした問題が存在することで、本来その集団が持つ能力が十分に生かされず、「正解者がいるのに不正解にたどり着く」といったことが起こるのです。

「プロセス・ロス」が起こる原因【図解 社会心理学】

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多数派の意見に同調してしまうのはどうして?

日本人はよく多数派に同調しやすい、そんなイメージがあるかもしれません。しかし、この傾向はどんな人にも当て余る普遍性を持ったものなのです。なぜ私たちは多数派の意見に同調しやすいのでしょうか?この同調について、有名な実験があります。

この実験はカード①に描かれた線と同じ長さのものを、カード②に描かれた3本の線の中から選ぶというもので、実験には8人の学生が参加しました。回答はひとりずつ順番に行いますが、実は参加者のうち7人は〝サクラ〞で、あらかじめどの線を答えるかを指定されていました。

明らかに間違った答えでも多数派に同調してしまう

この実験の目的は、多数が間違った回答をした場合、被験者はそれに同調するかを調べることで、被験者は7人のサクラの回答を聞いたあと、8番目に回答します。実験は線の長さを変えながら複数回行われましたが、問題自体はいずれもひとりで回答したときは正解率99%というごく簡単なものでした

ところが、7人全員が誤った回答をした条件下だと、被験者による誤答率は32%にも上りました。普通なら間違えようのない問題でも、全員が別の回答を選ぶと、それに大きく影響されてしまうことが明らかとなったわけです。なお、7人のサクラのうち、必ず正解を答える他者がひとりいた場合、被験者の誤答率は5・5%まで低下しました。

会社の会議などでも全員一致の意見に反対するのは勇気がいりますが、ひとりでも反対者がいれば意見を表明しやすくなります。同調を促うながすには全員一致であることが重要で、ひとりでも自分と同じ意見の人がいると、その圧力は大きく弱まるというわけです。

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【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』
監修:亀田達也

「社会心理学」は、心理学の中でも重要かつ人気のジャンル。個人同士の協力、競争、攻撃、援助など「他者との関係」、そして集団、組織など個人を取り巻く「社会との関係」をテーマとする「社会心理学」を、わかりやすく、かつ堅苦しくならないように図解・イラストを用いて紹介する。「社会現象と心理学」、「職場における心理学」「社会の在り方と心理学」など、現代日本において興味深く読めるような身近なテーマを立てて、さらにこれまで行われた心理実験と結果など、「心理学」全般の内容を誌面に取り入れて解説する。会社、学校、家庭、友人ーー集団や社会の中の個や対人関係の本質、行動原理を社会心理学から読み解く1冊!

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