敵集団への強い敵対感情によって対立が起こる
味方のチームに声援を送り、敵チームには野次を飛ばす。スポーツマンシップを無視した行為ですが、スポーツの現場でたびたび見られる光景です。
人は自分が属するチーム(内集団)には思いやりを持ち、他人が属するチーム(外集団)には敵がい心を抱きます。こうした集団間の対立を「集団間葛藤」と呼びます。シェリフらは、集団間葛藤を解消する方法を探すために3つの段階で構成された「泥棒洞窟実験」を行いました。
第1段階では、11歳から12歳の少年を22名集めて2つの集団にわけ、互いの集団の存在を知らせずに泥棒洞窟というキャンプ場に連れて行きました。最初の1週間ほどは、それぞれハイキングなどを通して、仲間意識を高めさせ、内集団を形成させました。
第2段階で、顔を合わせたふたつの集団を、賞品のかかった野球や綱引きで戦わせて、集団間葛藤を生じさせました。また、それぞれの集団では、仲間同士の団結や凝集性が高まり、相手(外集団)に勝つための組織の再編成が行われました。
この段階で集団間の人間関係を調べるために友人調査が行われましたが、ほとんどの少年が、内集団の仲間を友人と答えました。つまり、集団間葛藤が生じている場合は、仲間への連帯意識、相手集団への敵対意識がより強化されると判明したのです。
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多数派の意見に同調してしまうのはどうして?
日本人はよく多数派に同調しやすい、そんなイメージがあるかもしれません。しかし、この傾向はどんな人にも当て余る普遍性を持ったものなのです。なぜ私たちは多数派の意見に同調しやすいのでしょうか?この同調について、有名な実験があります。
この実験はカード①に描かれた線と同じ長さのものを、カード②に描かれた3本の線の中から選ぶというもので、実験には8人の学生が参加しました。回答はひとりずつ順番に行いますが、実は参加者のうち7人は〝サクラ〞で、あらかじめどの線を答えるかを指定されていました。
明らかに間違った答えでも多数派に同調してしまう
この実験の目的は、多数が間違った回答をした場合、被験者はそれに同調するかを調べることで、被験者は7人のサクラの回答を聞いたあと、8番目に回答します。実験は線の長さを変えながら複数回行われましたが、問題自体はいずれもひとりで回答したときは正解率99%というごく簡単なものでした
ところが、7人全員が誤った回答をした条件下だと、被験者による誤答率は32%にも上りました。普通なら間違えようのない問題でも、全員が別の回答を選ぶと、それに大きく影響されてしまうことが明らかとなったわけです。なお、7人のサクラのうち、必ず正解を答える他者がひとりいた場合、被験者の誤答率は5・5%まで低下しました。
会社の会議などでも全員一致の意見に反対するのは勇気がいりますが、ひとりでも反対者がいれば意見を表明しやすくなります。同調を促うながすには全員一致であることが重要で、ひとりでも自分と同じ意見の人がいると、その圧力は大きく弱まるというわけです。
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【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』
監修:亀田達也
「社会心理学」は、心理学の中でも重要かつ人気のジャンル。個人同士の協力、競争、攻撃、援助など「他者との関係」、そして集団、組織など個人を取り巻く「社会との関係」をテーマとする「社会心理学」を、わかりやすく、かつ堅苦しくならないように図解・イラストを用いて紹介する。「社会現象と心理学」、「職場における心理学」「社会の在り方と心理学」など、現代日本において興味深く読めるような身近なテーマを立てて、さらにこれまで行われた心理実験と結果など、「心理学」全般の内容を誌面に取り入れて解説する。会社、学校、家庭、友人ーー集団や社会の中の個や対人関係の本質、行動原理を社会心理学から読み解く1冊!
公開日:2023.06.20
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