ネクローシスとアポトーシスという死に方がある!
細胞の寿命は体の部位によってそれぞれ異なり、いちばん長い骨細胞でおよそ10年、筋肉細胞で6〜12ヵ月、皮膚細胞は20〜30、いちばん短い腸内の上皮細胞は1日といわれます。こうした「細胞死」には、大きく分けて2つの種類があります。予定されていない死である「ネクローシス」と、プログラムされた死である「アポトーシス」です。
ネクローシスは、外傷や細菌感染、栄養不足などのほかからの要因によって細胞が膨張・破裂して内容物が流出し、炎症反応を引き起こす予期せぬ細胞の死で、「壊死」とも呼ばれます。対するアポトーシスは、〝死のプログラム〟にしたがって細胞が収縮・分割し、最終的には「アポトーシス小体」と呼ばれる小さなかたまりとなってマクロファージ(白血球の一種)に貪どん食しょくされて消滅する「自発的な死」です。
炎症も起きず、ほとんど痕跡を残さないまま、一部は新たな細胞の材料として再利用されます。アポトーシスはさまざまな状況で起きることが知られており、脊椎動物の神経系の発生過程では、神経細胞の約半数がアポトーシスによって死んでいくといわれます。
たとえば、胎児の手足の指ができる過程にもアポトーシスがみられます。はじめはしゃもじのようだった腕や脚の先端が、ある程度成長すると指の間にあたるところの細胞が消滅して、わたしたちが目にする指の形ができてきます。また、日焼けのように強い紫外線によって遺伝子が修復不可能なほどに傷ついたときは、皮膚細胞は自らの判断で死んで、新しい皮膚に生まれ替わるなど、劣化した細胞は、ほかに被害を及ぼさないように自死するアポトーシスがプログラムされているのです。
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脳は重くてシワの数が多いほど頭がいいのか?
生物の体には不思議なポイントが沢山あります。そして特に最も神秘的なカラダの部位と言えば人間の脳です。まずは、人体の脳における不思議について解説しましょう。
動物と脳の関係を比較すると、一般に小動物ほど体重の割に脳が重く、逆に大型動物ほど軽いことがわかります。動物の脳と体重の間には、「脳の重量は体重の0.75乗に比例する」という規則性があり、これを「スケーリング」といいます。ただし、この動物界の普遍的な規則にあてはまらない動物がいます。それがヒトです。ヒトは、動物の中では例外的に大きな脳を持っているのです。
また、ヒトの場合、アインシュタインの脳が1230グラムと一般的な成人男性の脳(1350〜1500グラム)よりも小さかったことから、脳の大きさと頭のよさは関係ない、ともいわれます。しかし、カリフォルニア大学の「脳の大きさと知能指数(IQ)の関係」の研究では、わずかながら脳の大きな人ほどIQが高く、とくに「大脳皮質」の「前頭前野」と「後側頭葉」の皮質が厚い人のIQが高いという結果が発表されました。
天才は生まれつきではない、幼少期がポイント
ところが、さらに研究を進めると、皮質が厚くてもIQが高くない人がいることもわかりました。このことから「IQの高さは皮質の厚さより、脳が幼少期にどれだけ成長したかが重要」といわれてきました。この説を裏づけるように、IQが120以上の人の脳は、7〜9歳頃の幼少期にはむしろ平均よりも皮質が薄く、その後13歳まで肥大化し、厚みを増し続けていたとされ、幼少期の教育熱は高まりそうです。
しかし、一方でIQはあらゆる知能を網羅した数値ではなく、万能性がないことも把握する必要がありそうです。昔からよく「脳みそのシワが多いほど頭がいい」といわれます。しかし、脳のシワは胎児のときに大脳が形成される過程でつくられ、生まれたときにはすでにできあがっているため、成長してどんなに勉強してもシワの数は増えないそうです。
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【書誌情報】
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監修:荻野剛志
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公開日:2023.11.21