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症状と漢方処方 冷え性②【生薬と漢方薬の事典】

Text:田中耕一郎

症状と漢方処方 冷え性②

体質からみる気滞による冷え性

精神面が原因で手足が冷える

処方:四逆散

緊張しやすい人の冷え

いくら温めても冷えが改善しない場合、精神症状から冷えが起きている可能性があります。緊張しやすく、イライラしがちで、暑がりで薄着なのに手は冷えているといったタイプです。体の内面は冷えていないのに、緊張から気血の巡りが悪くなって、手足の表面に冷えが生じます。

冷えの治療はいらない

心底冷えているタイプではないので、温める治療は必要ありません。まず体の冷えの原因が、緊張などの精神症状であることを自覚することが大切です。そして緊張をとり、気血の巡りをよくする治療をします。

四逆散は配合されている柴胡が緊張をとる働きをします。さらに気を巡らせる作用のある枳実も、気の流れをよくする効果があります。

体質からみる水毒による冷え性

体に滞る水による冷えとむくみ

処方:真武湯/当帰芍薬散

陽虚になると水毒になりやすい

水の巡りが悪くなり、体に水が停滞して起こる冷え性です。もともと陽虚がある人は水毒になりやすいため、両方をあわせもっている人もいます。冷えの症状を改善するためにせっせと温めてもなかなか改善しないこのタイプは、むくみをとることで冷えの改善がみられます。

水毒と陽虚の人は真武湯

水毒による冷えには、真武湯を用います。配合されている附子で温め、茯苓と蒼朮で水を流して巡りをよくします。水毒と陽虚のある人は温めながらむくみをとるのが効果的です。

水毒に血虚がともなうケースもあります。この場合は当帰芍薬散が処方されます。当帰と芍薬で血を補い、茯苓と沢瀉で水毒を改善します。

養生・セルフケア

過ごし方

陽虚の人は、冬に冷えがすすんでしまうので、夏のうちから冷えないように過ごしましょう。

漢方では太陽をエネルギーととらえ、夏に太陽を浴びることで元気になると考えます。冷房のきいた室内で心地よい涼しさばかりを求めずに、多少暑くても日光を浴びて陽を補うことが必要です。夏に熱量を補うことなく、秋・冬に突入するのはNGです。

また、冬に寒さに負けて、かぜばかりひいていると、ますます陽虚はすすみます。冬は体を守りながら、無理をしないで過ごすことが大切です。

夜に活動することも体を冷えやすくします。血虚にもなりやすくなるので、血虚による冷え性の人は、夜は早く寝るように心がけましょう。

食べもの

中国では暑い季節でも、氷を入れた飲みものなど、冷たいものはあまり飲む習慣がありません。冬でもつめたいものを好む人が増えていますが、陽虚の人はどんどん体が冷えやすくなり、むくみやすくもなるので注意しましょう。

体を温める作用の強い羊肉や、ネギ、ニラ、ニンニク、ショウガ、トウガラシなど、体を温める食材を積極的に食生活にとり入れましょう。

【出典】『生薬と漢方薬の事典』著:田中耕一郎

【書誌情報】
『生薬と漢方薬の辞典』
著:田中耕一郎/ 監修:奈良和彦・千葉浩輝

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