めまい・ 耳鳴り
めまいはフラっとする軽いものから、急激に起きて倒れ込んでしまうものまであらわれ方はさまざまです。また、耳鳴りにも、耳もとでセミが鳴いているような激しいものや、聴力の低下をともなうものなどがあります。めまいも耳鳴りも体の上部で起こる症状で、めまいの原因は気逆や気虚が、耳鳴りの原因は気滞と、加齢による腎虚に大きく分けられます。
その他 水気上逆によるめまい
気と一緒に水が上にのぼって起こる
処方:苓桂朮甘湯
急激にあらわれるめまい
気と水が体の上に急激にのぼること(水気上逆)によってめまいが起こり、救急車を呼びたいほどの強い症状があらわれることもあります。 苓桂朮甘湯を用いて、体の上部を温め、水をおろしてくることでめまいを改善します。
体質からみる脾気虚 痰飲よるめまい
疲れもあってフラフラするめまい
処方:半夏白朮天麻湯
体の余分な水分をとる処方を
脾の気虚の人は、消化力が悪いと痰飲をためやすくなります。ねっとりとした水である痰飲が上にのぼってめまいを起こします。水分代謝が低下しているので、体が重だるくなり、なかなか治らずに長引きます。半夏白朮天麻湯を用いて、余分な水分をとり除いて改善させます。
体質からみる気滞による耳鳴り
メンタルが原因となる一過性の耳鳴り
処方:四逆散
聴力の低下をともなうことも
緊張やストレスなどが原因で気の巡りが滞ると、それが原因となって耳のつまり感をともなう耳鳴りが起こることがあります。この場合は、四逆散を用いて気の停滞を改善します。
体質からみる腎虚による耳鳴り
加齢とともに出やすくなる耳鳴り
処方:八味地黄丸
腎を補って体力回復を
年齢とともに腎のエネルギーが不足して腎虚になると、難聴をともなう耳鳴りが起こることがあります。この場合には、加齢による諸症状を改善する八味地黄丸を用います。即効性は期待できませんが、長期に内服し腎を補う必要があります。
【出典】『生薬と漢方薬の事典』著:田中耕一郎
【書誌情報】
『生薬と漢方薬の辞典』
著:田中耕一郎/ 監修:奈良和彦・千葉浩輝
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公開日:2024.12.18