鼻水・鼻づまり(花粉症)
鼻水・鼻づまりは、風熱によるものと、風寒によるもの、大きくふたつのタイプに分けられます。冷やすと心地よいのは風熱の症状、温めると心地よいのが風寒の症状です。花粉症の場合には、冬から春にかけては風寒のタイプ、夏に近づいていくと風熱のタイプへと証が変化することもあります。そのため、風寒の処方では症状の改善がみられなくなったら、処方を変えることが必要です。
病邪からみる風熱による鼻水・鼻づまり
ドロドロした鼻水で鼻づまりがひどい
処方:越婢加朮湯
熱っぽくなり目も充血
黄色っぽいドロドロした鼻水が特徴です。濃い鼻水のために鼻がつまりやすく、口が渇き、のどもヒリヒリと痛みます。顔がむくみ、熱っぽくて目が充血するといった症状もみられます。
熱やはれを除く処方を
熱を冷やしたり発散させたりする作用のある、越婢加朮湯を用います。麻黄石膏などが炎症をおさえる働きをし、花粉症で、結膜炎の症状が強く目やにが多い人にもよく処方されます。
病邪からみる風寒による鼻水・鼻づまり
サラサラとした鼻水がたれてくる
処方:小青竜湯/葛根湯加川芎辛夷
もともと冷えやすい人は注意
透明なサラサラした鼻水が特徴で、くしゃみがよく出ます。鼻水が水のように流れてしまうので、鼻づまりはひどくなく、のどの痛みもあまりありません。もともと陽虚が強い人は冬の寒邪の影響を受けやすく、春に風寒になる傾向があります。
まずは小青竜湯で様子をみる
アレルギー性鼻炎、花粉症、かぜのひきはじめなど、鼻水の症状があるときにとてもよく使われる方剤が小青竜湯です。発汗作用や、水分を調整する作用があり、水様性の鼻水に効果を発揮します。
鼻づまりがひどい場合は、粘膜のはれをおさえる作用があり、慢性鼻炎などにもよく使われる葛根湯加川芎辛夷を用います。小青竜湯と併用することもあります。
養生・セルフケア
過ごし方
花粉症の人は、症状の出る春のひとつ前の季節、冬場の過ごし方がとても重要です。冬に無理をして陽気をたくさん使ってしまったり、体を冷やしてしまうと腎の陽虚になり、風寒を受けやすくなるのです。毎年、春になってあわてて薬で症状をおさえる生活を改善するために、冬は暖かくしてゆったりと過ごすように心がけましょう。
また、夜に無理をする生活を続けると、腎の陰虚になり風熱を受けやすくなります。夜はしっかり睡眠をとりましょう。今まで花粉症でなかった人も、冬や夜に無理をして、腎を虚する生活をしていると、あるとき症状があらわれるでしょう。
【出典】『生薬と漢方薬の事典』著:田中耕一郎
【書誌情報】
『生薬と漢方薬の辞典』
著:田中耕一郎/ 監修:奈良和彦・千葉浩輝
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公開日:2024.12.27