カナダの先住民文化の経済効果は2000億円!?【図解 地理と経済の話】
体験を通じて先住民文化を理解する
カナダには憲法で権利を認められたファーストネーション、メティ、イヌイットという3つの先住民族グループが暮らしています。メティは先住民とヨーロッパからの入植者の混血で、イヌイットは氷雪地帯に居住する先住民。ファーストネーションは、メティとイヌイット以外の先住民を指します。これら先住民の人口はおよそ200万人。カナダの総人口は4000万人弱なので、その5%ほどに相当します。
カナダで注目されているビジネスモデルが「先住民観光」。アクティビティやワークショップ体験などを通じて、先住民文化への理解を深めることを目的としたカルチャーツーリズムのひとつです。先住民の独自文化を保護すると同時に地域活性化をもたらすメリットもあり、2019年にはGDP寄与額が年間19億カナダドル(約2000億円)に達しました。
約4万人の雇用を生み出すなど成長を続けていた先住民観光ですが、コロナ禍によって大きく減速。GDP寄与額も3分の1まで激減し、失業者も増加しました。現在は2019年の水準に戻すべく、さまざまな施策がとられています。一方で、行動制限により国内観光に対するニーズが高まり、カナダ人自身が自国の先住民文化に関心を抱くようになったのも、よい兆候といえるでしょう。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』
著者:井田仁康
著者プロフィール
井田仁康:筑波大学名誉教授。博士(理学)。1958 年生まれ。日本社会科教育学会長、日本地理教育学会長などを歴任し、日本地理学会理事。筑波大学第一学群自然学類卒。筑波大学大学院地球科学研究科単位取得退学。社会科教育・地理教育の研究を行っている。著書や編著書に『読むだけで世界地図が頭に入る本』(ダイヤモンド社)、『世界の今がわかる「地理」の本』(三笠書房)などがある
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昨今、地理的条件から政治を分析する「地政学」が注目を集めています。国土の形や立地、隣国との位置関係や気候などから、政治的・軍事的な影響を研究する学問で、世界情勢を紐解くうえで欠かせない考え方といえます。実は、地理は政治だけでなく、経済にも大きく関わっています。一見繋がりが見えにくい地理と経済の話ですが、
・インドでIT産業が特に発展したのはなぜ?・天然資源に恵まれたアフリカがなかなか成長できなかったのはなぜ?・中国やインドに続いて今後さらに伸びていく国はどこ?・中東で大量の石油が採れるのはなぜ? これらはすべて「地理」で説明ができます。今の世界情勢からこの先世界がどう動いていくかまで、世の中の流れがわかるようになる「経済地理学」が面白く学べる一冊です!
公開日:2024.10.09