なぜ東南アジアは言語や宗教がバラバラなの?【図解 地理と経済の話】
古来、多くの民族がこの地に流入した
東南アジアはふたつの造山帯が集まる場所にあるため、古くから地殻変動が活発でした。高山が多く、海に大小数万の島を有するのもそのためです。この地理特性によって、少数の民族や集団がひそかに生き延びることが可能となりました。
季節風と、拠点となる島々があることから、かねてこの一帯は海上交通の盛んな地域としても知られていました。そこでいわゆる「海のシルクロード」の要衝として、多くの民族がこの地にやってきます。また近代以降は、植民地としてヨーロッパなど異文化の人々による支配を受けた経験から、多くの国が多民族国家に。そこに先住民族が入り混じり、結果として言語や宗教も多様化していきました。
たとえば言語では、多くの国で華僑(中国生まれで外国に移住した人々)は中国語、インドはタミル語やヒンディー語など、マレーシアではマレー語を使うほか、自国語以外に英語を公用語とするケースもあります。
宗教に目を向けると、大陸部は仏教徒、インドネシアの島しょ部はムスリムが多い傾向にあるようです。ほかにもフィリピンのようなキリスト教徒が多い国もあります。統一感はないものの、それがいい意味で地域内の文化の多様性を生んでいるのです。
主な東南アジア諸国の特徴
ベトナム:旧正月や中秋節など中国文化の影響が強い。仏教徒が多いが、キリスト教やムスリムなども公的に認められている。
ミャンマー:以前の国名はビルマ。人口の9割が仏教徒でムスリムへの差別や弾圧が苛烈。現在は軍事政権下にある。
マレーシア:マレー系、華僑、インド系を主要民族とする多民族国家。国教はムスリムで、主にマレー系が信仰。
※古くから異文化・異民族の支配にさらされたため、東南アジアは多様な民族・言語・宗教を有する地域になった。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』
著者:井田仁康
著者プロフィール
井田仁康:筑波大学名誉教授。博士(理学)。1958 年生まれ。日本社会科教育学会長、日本地理教育学会長などを歴任し、日本地理学会理事。筑波大学第一学群自然学類卒。筑波大学大学院地球科学研究科単位取得退学。社会科教育・地理教育の研究を行っている。著書や編著書に『読むだけで世界地図が頭に入る本』(ダイヤモンド社)、『世界の今がわかる「地理」の本』(三笠書房)などがある
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公開日:2024.10.25