ヒグマ
ヒグマはヨーロッパからアジアにかけてのユーラシア大陸と北アメリカ大陸に幅広く分布しています。クマ科では最も体が大きいものの一つで、オスは体長2.8m、体重は780㎏にも及ぶものもいます。日本ではエゾヒグマが北海道にのみ生息し、陸上に棲む哺乳類の中で国内最大です。
ハンターとしてのヒグマは、川を遡上するサケを捕らえる姿を思い浮かべる人も多いでしょう。ヒグマは泳ぎも得意で水を怖がらないため、川の中に顏を突っ込んだり、サケが上ってくる滝の上流で待ちかまえたりしてサケをとります。捕まえるときは、長く鋭い爪で鮭を引っかけたり、両手でわしづかみにします。産卵のために秋に川に戻ってくるサケは、ヒグマにとっては冬眠前の大切な栄養源。効率よく栄養を得ようと、脂肪の多いサケの皮や卵だけを主に食べます。
ヒグマは、サケだけではなく、木の実や野草などの植物や哺乳動物も食べる雑食です。クマの中では比較的肉食を好む傾向があり、他の動物の獲物を奪って食べることもあります。ヒグマの大きな鼻は嗅覚が鋭く、土の中に潜んでいる昆虫や、遠くにいる獲物のにおいをかぎ分けることができます。また、長くて鋭い爪は土を掘り返したり、獲物を引っ掻いて攻撃したりするのに使われます。ヒグマの足の裏は人間と同じく平らなので後ろ脚の2本で立つこともでき、立った状態で屈強な腕からパンチを食らうと大きな動物でもひとたまりもありません。基本的には人を怖がりますが、恐怖心から人を襲い、その肉を食べることもあります。ヒグマは聴覚も優れていて大きな音を嫌がるため、ラジオや鈴を鳴らしながら歩くと熊よけになると言われています。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 ハンター生物の話』
監修:今泉忠明 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
国立科学博物館で哺乳類の分類学・生態学を学ぶ。
上野動物園の動物解説員を経て、「ねこの博物館」(静岡県伊東市)館長。著書も多数。
【書籍情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 ハンター生物の話』
監修:今泉忠明 日本文芸社刊
図解シリーズで解説するハンター生物の話!ライオン、大鷲、ホオジロザメなど陸・海・空のハンター生物の狩りの方法をイラスト付きで紹介する一冊です。単に子ども向けの図鑑ではなく、イラストと文章できちんと動物の生態を解説。動物が生きるために、どのような工夫をしているのかを紹介します。
公開日:2022.02.08