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スサノオノミコトがオオアナムヂノカミに与えた試練とは?【眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 古事記の話】

Text:谷口雅博

スサノオが与えた試練

スセリビメを正妻に

【スサノオの娘と結ばれたオオアナムヂ】

スサノオノミコトの宮殿の前までやってきたオオアナムヂノカミはスサノオノミコトの娘、スセリビメ (湏勢理毗売)に出迎えられました。二柱の神は目と目が合うと互いの心が通じ合い、すぐ結婚します。

「とても立派な神がおいでになりました」

娘の知らせに表に出たスサノオノミコトはひと目見ただけでオオアナムヂノカミが何者であるかをいい当てます。

スサノオノミコトはオオアナムヂノカミをなかへ呼び入れ、蛇(へび)が大量にいる岩屋に案内し、そこで一夜を明かせと命じました。

オオアナムヂノカミはスセリビメがくれた呪力(じゅりょく)を持つ布のおかげで蛇の害を免れ、ぐっすり眠ることができました

次の夜はムカデとハチの巣食う岩屋に入れられますが、スセリビメが新たにくれたムカデとハチ用の布のおかげで、今度もまた無事に岩屋から出ることができました

次にスサノオノミコトは、広い野原に鏑矢(かぶらや)を放つと、オオアナムヂノカミにそれを拾ってくるように命じました。オオアナムヂノカミが野原に分け入ると、スサノオノミコトはただちに野に火をつけ、オオアナムヂノカミの周りをぐるりと炎の壁で覆いました。オオアナムヂノカミは逃げ場を失いますが、そこに現れた一匹のネズミに助けられ、またもや難を免(まぬが)れます

すると、スサノオノミコトはオオアナムヂノカミを大きな岩屋に連れて行き、今度は自分の頭についている虱(しらみ)をとるよう命じました。見れば、頭には虱ではなく、無数のムカデが這い回っています。

オオアナムヂノカミが途方に暮れていると、スセリビメはそっと椋(むく)の実と赤土を手渡しました。スセリビメの知恵を借りたオオアナムヂノカミは、ムカデをとるふりをして口のなかで椋の実を噛み潰し、赤土といっしょに吐き出しました。

それを見たスサノオノミコトはムカデを噛み砕いては吐き出しているのだと勘違いし、可愛い奴だと心を許し、眠ってしまいます。

その隙にオオアナムヂノカミはスサノオノミコトの髪を束ね、太い柱に結びつけると、戸口を大きな岩でふさぎました。そして、スセリビメを背負うと、スサノオノミコトの宝物である生太刀(いくたち)と生弓矢(いくゆみや)、天(あめ)の沼琴(ぬごと)を携えて一目散に逃げ出します。

そのとき琴が木に触れ、大地も揺れ動くほどの大きな音が響き渡りました。

スサノオノミコトはその音ではっと目覚めましたが、髪を結ばれているためすぐには追いかけることができません。ようやく走り出したスサノオノミコトは黄泉(よも)つひら坂(さか)まで来たところで追跡を断念し、大声で叫びました。

「おまえが掠(かす)めた生太刀と生弓矢で、腹違いの兄弟である八十神たちをとことん追いつめなさい。そして、おまえがオオクニヌシノカミとなって、わが娘のスセリビメを正妻とし、出雲(いずも)の*宇迦(うか)の山の麓に立派な宮殿を建てて住まいとしろ。こいつめ!」

オオアナムヂノカミはいわれたとおりにオオクニヌシノカミとなり、国づくりをはじめることになります

さて、オオクニヌシノカミは、すでにヤカミヒメと結婚していましたが、ヤカミヒメはスセリビメを恐れるあまり、自分が産んだ子を木の股において、稲羽の国へ帰ってしまいました。ゆえにこの子の名をキマタノカミ(木俣の神) 、またはミイノカミ(御井の神)といいます。

恋多きオオクニヌシノカミは、高志(こし)の国 (北陸)のヌナカワヒメ(沼河比売)とも夫婦になり、ほかにも三柱の妻を娶(めと)って、合わせて五柱の子をもうけています。

* 出雲大社の東北にある御崎山を別名「宇賀山」という。

スサノオが与えた試練

オオアナムヂは蛇の岩屋で一夜を過ごした。

スサノオが与えた試練

スセリビメの父、スサノオノミコトはオオアナムヂノカミに多くの試練を課した。

スサノオが与えた試練

スサノオから逃れたオオアナムヂはオオクニヌシノカミとなって国づくりをする。

大国主の神の子孫

大国主の神の子孫

オオクニヌシの成長

はじめは、八十神にされるがままだったオオアナムヂだが試練を乗り越えるごとに成長を遂げ、ついに国をつくるまでになる。

オオクニヌシの成長

オオクニヌシの成長

【八十神の凶行】
→無抵抗のまま八十神に2度も殺され、母神などによって命をとり戻す
→【根の堅州国】蛇退治・炎からの脱出・ムカデの危険を回避(スセリビメやネズミに助けられながらスサノオからの試練を乗り超える)
→根の堅州国(スサノオ)からの脱出(ついに自力でスセリビメを連れ出し、葦原の中つ国へ戻る)
→オオクニヌシとなり国づくりを行なう

🔍『古事記』最初の恋歌

スセリビメと結ばれたオオクニヌシですが、特に『古事記』で詳しく語られるのが、ヌナカワヒメとオオクニヌシの恋です。そのほとんどは歌のやりとりで進んでいきます。『古事記』のなかで男女の仲に関する歌が詠まれたのはここが最初になります。歌によって物語を紡ぐことで、男と女の情景がより臨場感をもって伝わってきます。

オオクニヌシとヌナカワヒメの歌のやりとり


「私はこれまで理想的な妻を娶ることができないで、賢く美しい女があると聞いて、求婚するために来ました。あなたが寝ている部屋の前に立っていると、鵺(トラツグミ)・雉・鶏がけたたましく鳴いた。こんな鳥は早く鳴きやませてくれ。」


「私は鳥のようにあなたを求めています。わがままな鳥でしょうがどうせあなたの思い通りになりますから、鳥は殺さないでください。夜になれば、あなたは毎日のようにここで私をかわいがり、私の手を枕にして眠るのですから。」

歌によって恋仲を深めていったオオクニヌシとヌナカワヒメはすぐに結婚します。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 古事記の話』監修:谷口雅博

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 古事記の話』
監修:谷口雅博 日本文芸社刊


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