月は惑星と地球の巨大衝突によってできた
月の直径は地球の約4分の1です。実は太陽系の衛星のなかで、惑星の大きさに対してこれほど大きい衛星はほかにありません。木星の衛星は27分の1、火星の衛星は310分の1ほど。月がなぜこれほど大きいのかについてはまだ解明されていません。そんな月の起源については長年議論されてきました。
月起源の主な説は次の3つでした。
• 親子説(分裂説)……誕生直後に、高速で自転する地球の赤道付近の一部が遠心力でちぎれて飛び出した。
• 兄弟説(共成長説)……微惑星から原始地球が形成されるときに、同じガスやちりからできた。
• 他人説(捕獲説)……別に形成された微惑星が、地球の引力にとらえられた。
しかし、計算上、微惑星表層がちぎれるほどの自転速度ではなかったことがわかったり(親子説)、地球と月の内部構造がまったく違うのは変だったり(兄弟説)、自分のおよそ81分の1を超える質量をもつ天体を捕まえることは困難だったり(他人説)と、どの説にも疑問が残りました。そこに登場したのが「ジャイアント・インパクト仮説」でした。この説を提唱したのはドン・デービスとウイリアム・ハートマン。1975年のことでした。
惑星と地球の衝突で誕生したのであれば、衝突した天体の破片と原始地球のマントル層が吹き飛ばされ主成分になったと考えられ、月に金属の核がほとんどないことも説明がつきます。これはコンピュータによるシミュレーションとも合致して、この説が現在ではもっとも有力視されています。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 宇宙の話』 著:渡部潤一
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 宇宙の話』
監修:渡部潤一
「地球はどうやってできたの? 宇宙のどこにあるの? 」「太陽が巨大化するってホント?」「月のクレーターや『月の海』って?」「 宇宙はどんな構造?いくつもあるの? 」など素朴なギモンに即答で宇宙のナゾに迫る! ——地球の生い立ちから、お隣の天体・月の謎、太陽と惑星の素顔、恒星と銀河、宇宙論まで、最新の天文学、宇宙物理学、惑星科学に踏まえてやさしく解説。豊富なイラスト、61テーマと興味深い宇宙・星座コラムで、夢とロマンに満ちた、いちばん新しい宇宙の姿がよくわかります。太陽系のナゾから最新の宇宙理論まで、宇宙のフシギをズバリ解明します!
公開日:2024.02.10