ホオジロザメには“細胞修復遺伝子”イモリには“器官再生遺伝子”がある
ヒトにはない驚異の遺伝子
ここまで遺伝子についての話をしてきましたが、自然界には驚くべき遺伝子をもった生物がいることをご存知でしょうか。それは、4億年以上も地球にすみ続けてきたサメのなかでも、群を抜く存在感のホオジロザメです。そのゲノム解析が行われ、遺伝子の実態が明らかになりました。
サメが傷の治癒力や抗がん性にすぐれた能力をもつことは知られていましたが、ホオジロザメの調査によって、遺伝的多様性を促進し、健康的でいることができる、トランスポゾンという遺伝子を多数もっていることがわかったのです。このために大きな傷を負っても細胞の修復機能が働いて、しばらくすると回復し、がんにおかされることが少なく、長年にわたって健康でいられます。
再生能力の面では、小さな体に脅威の能力をもつ、ウーパールーパー、イモリ、プラナリアが優れています。かれらは、脚やしっぽなど、どこを切っても切られても再生できます。目や心臓などの組織を失っても、再生できる能力をもっています。
川や水辺にすむ1〜3cmの小さなプラナリアにいたっては、体を真っ二つに切っても、もとどおりになります。ホオジロザメやプラナリアたちのヒトにはない能力は、ヒトの病気治療や健康長寿実現へのカギになるとして、遺伝子情報の応用が研究されています。
ホオジロザメのスーパー遺伝子
多くの生物は加齢に伴って DNA が傷つき、修復されないまま蓄積される。ホオジロサメは DNA を修復したり、環境の変化に適応するために必要な遺伝子をもっている。このスーパー遺伝子の情報がわかれば、ヒトもホオジロザメなみの健康長寿を手に入れられるかもしれない。
不死身のイモリ! 驚くべき再生遺伝子
体のどこを失っても平気なイモリ。脚やしっぽの再生はよく知られているが、水晶体も再生でき、心臓を半分失っても再生するという報告も。この能力をヒトに応用できるか、そんな研究も進められている。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』著:高橋祥子
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』
著:高橋祥子
『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』は、生命科学の基本概念を分かりやすく解説した書籍です。生命科学は、生物の構造や機能、進化などを研究する学問ですが、専門的な知識が必要で、難しく感じることも多い分野です。しかし、この本では、豊富な図解やイラストを使い、専門用語や複雑な内容をわかりやすく噛み砕いて説明しています。
特に、DNA、遺伝子、進化、免疫など、私たちの体や生命現象に関わる重要なトピックを、科学的な視点から解説しつつ、日常生活に関連づけて説明しています。初心者でも理解できるように配慮されており、難解なテーマでも「なるほど」と納得できる構成になっています。この本は、生命科学に興味があるけれども専門的な知識がない方、または生物学を学んでいる学生など、幅広い読者におすすめです。
公開日:2024.10.26