過活動膀胱の原因とは
失禁は、生活の質(QOL)を大きく下げる原因の1つですが、いくつかの種類に分けられます。「我慢ができず間に合わない(切迫性)」「重いものを持ったり咳をしたとき(腹圧性)」(下図)「膀胱に大量の尿が溜まって溢れている(溢流性)」などで、膀胱の過活動によって起きるのは主として“切迫性の失禁”です。
過活動膀胱とは、おしっこが大して溜まっていなくても、突然強い尿意が起こり(尿意切迫)、本人の意思とは関係なく尿を出そうとする反射的な症状に、通常の頻尿をともなう症状のこと。このため失禁がよく見られますが、失禁は必ずしも必須の条件ではありません。頻尿には正式な定義はありませんが、1日の排尿回数8回以上が目安となっています。
また、夜間1回以上おしっこに起きれば夜間頻尿とされていますが、高齢になると1回くらいは起きることが多いため、睡眠に支障がなければ2回以上が問題とされます。過活動膀胱の原因としては、
・脳神経の病気によるもの
・脊髄神経の異常によるもの
・前立腺肥大症(男性)
・骨盤底の筋肉や靱帯の衰え(女性)
つまり、老化が原因の1つですが、このほかに原因のはっきりしない特発性のものも多く見られます。過活動膀胱は、膀胱から脳に送られる“おしっこが溜まった”というサインと、脳が発する“おしっこを出してよい”という指令のバランスがくずれた状態になっているといえます。ですが、尿意の切迫感が生じるきっかけは個人によっていろいろで、「手を洗う」「歯を磨く」「水の流れる音」などが代表的なきっかけです。治療の第一歩は、膀胱に尿を溜める訓練や骨盤の底の筋肉を鍛える体操ですが(下図)、これに合わせて薬による治療が検討されるのです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』監/長岡功 野村義宏
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』
長岡 功 総監修/ 野村 義宏 監修
高齢化や平均寿命が伸びた社会では、「老化」は誰もが避けられない、しかし誰もが可能な限り抗いたいテーマ。その多くは人体の「老化現象」、またそれに伴う「諸症状」として、完全には克服できないまでも、原因やしくみを知ってうまく対応すれば、症状を「やわらげる」ことや、日常生活での「影響を少なくする」こと、また「目立たなくする」ことが可能である。本書では具体的に、老化にともなう病気・諸症状の原因に言及し、その対処・対策法を解説、紹介する。中高年以降の健康と美容の悩みを楽しく読めて、一気に解決する一冊です。
公開日:2023.05.01