ソフトクリームの断面形状は星型
溝に板を渡して歩くと、板の真ん中がいちばんたわみます。そのたわみ量は渡した板の長さの3乗に比例して大きくなります。当然、たわみ量は体重が重いほど大きいですね。板のヤング率(板の強さE)は、断面二次モーメントIに反比例します。つまり、板の剛性が高い(Eno値が大きい)とたわみにくいし、断面二次モーメントが大きい(曲がりにくい)とたわみにくいこともわかります。
「たわむ」とか「曲げる」場合、板の内側は圧縮、外側は引張の力を受けます。単位面積当たりにかかる力を「応力」と呼びます。曲げられたときの板の内部の応力は、板の中心を挟んで外側の「引張応力」から内側の「圧縮応力」まで直線的に変化します。板の中心では、応力はマイナスからプラスに転じるためにゼロとなっています。なので、板の長手方向に対して直交(直角に交わる)する断面で見ると、板の中心周りのモーメントを受けているのがわかります。
応力の最大値は板の表面で生じます。仮に曲げモーメントMがかかったとき、この最大応力が小さくなるような断面形状があると曲がりにくいことが容易にわかります。それが断面二次モーメントを断面中心から板の端までの距離で割った値Zで、「断面係数」といいます。
長方形断面の板の断面係数は板幅と厚みの2乗に比例します。これが大きいほど曲げにくい、たわみにくいことになります。断面係数には板の材質や強度の情報が入っていませんから、単に断面の形状だけで曲げやすさや曲げにくさが判断できます。ところで、ソフトクリームをマシーンから押し出してくる断面形状は、以前は円でした。それが星形になったのは同じ量のソフトクリームなら、星形のほうが断面係数は小さくて曲がりやすく、素人でもクルクルと形づくりやすかったからです。鉄道のレールがⅠ型なのも曲げ強度は保ったまま、使用する鉄の量を減らせるからです。調べてみると、断面係数の強弱によって使われているものが多く見られるかもしれませんね。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』著/望月修
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』
著:望月修
物理学は、物質の本質と物の理(ことわり)を追究する学問です。文明発展の根底には物理学の考えが息づいています。私たちの生活の周辺を見渡しただけでも、明かりが部屋を照らし、移動するために電車のモーターが稼働し、スマートフォンの基板には半導体が使われ、私たちが過ごす家やビルも台風や地震にも倒れないように設計されています。これらすべてのことが物理学によって見出された法則に従って成り立ち、物理学は工学をはじめ、生命科学、生物学、情報科学といった、さまざまな分野と連携しています。……料理、キッチン、トイレ、通勤電車、自動車、飛行機、ロケット、スポーツ、建築物、地震、火山噴火、温暖化、自然、宇宙まで、生活に活かされているもの、また人類と科学技術の進歩に直結するような「物理」を取り上げて、わかりやすく図解で紹介。興味深い、役立つ物理の話が満載の一冊。あらゆる物事の原理やしくみが基本から応用(実用)まで理解できます!
公開日:2023.06.10