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源氏、不遇の時代を過ごす~巻名:須磨・明石~【図解 源氏物語】

Text:高木 和子

都を思う禊の日々(須磨)

朧月夜との密会が見つかって右大臣一派を激怒させた源氏は、官位を剝奪され、いよいよ追いつめられます。東宮を守るためにも、処分が下る前にと、自ら須磨に行くことを決意しました。夕霧のいる左大臣邸に挨拶し、紫の上とも語り合い、花散里を訪問し、朧月夜と文を交わし、出家して入道の宮となった藤壺の元に参上し、それぞれ別れを惜しみます。桐壺院の墓前に参り、東宮にも手紙を送り、紫の上にあとのことを託して、3月下旬、親しい七、八人の供の者だけを連れて秘かに旅立ちました。

須磨では、うら寂しい住まいで男たちとの暮らしです。都の女性たちと手紙をやり取りするのだけが源氏の慰めでした。8月の十五夜、美しい月を見て「今日は十五夜だった」と気づいた源氏は、宮中での管絃遊びを思い出し、都に思いを馳せます。一方、明石の入道は、源氏が須磨に下ったと聞き、高貴な相手と結婚させたいと考えていた一人娘の明石の君に好機がめぐってきたと考えます。

翌年の2月、宰相中将(さいしょうのちゅうじょう 元・頭中将)が慰めに訪れます。世の中がつまらなく思えて源氏が恋しくなり、「もし人に知られて罪になってもかまわない」と覚悟のうえで訪ねてきた宰相中将を、見るなり源氏は涙をこぼしました。懐かしい話をしたりして、泣き笑いのときを過ごしたのでした。3月、海辺で禊の儀式をはじめた源氏を激しい嵐が襲います。すっかり弱気になり、疲れ果てて床についた源氏の夢に、何者かが現れました。

入道の宮・・・出家した新王・内親王や女院などの呼び名。

十五夜

源氏は十五夜の月を見て、都を思い出す

須磨は、大阪湾に臨み、向かいには淡路島を有す土地。都からはさほど遠くない場所だったが、人も少なく、その様子を光源氏は「身に染みるばかりに寂しい山の中」と評している。須磨のわび住まいでは、風の音を聞き、歌を詠み、琴を奏でるといった日々を送る。月を見て故郷を憶(おも)うのは中唐の詩人、白居易などに見られる発想である。

月を見て都を思う

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』高木 和子

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』
高木 和子 監修

平安時代に紫式部によって著された長編小説、日本古典文学の最高傑作といわれる『源氏物語』は、千年の時を超え、今でも読み継がれる大ベストセラー。光源氏、紫の上、桐壺、末摘花、薫の君、匂宮————古文の授業で興味を持った人も、慣れない古文と全54巻という大長編に途中挫折した人も多いはず。本書は、登場人物、巻ごとのあらすじ、ストーリーと名場面を中心に解説。平安時代当時の風俗や暮らし、衣装やアイテム、ものの考え方も紹介。また、理解を助けるための名シーンの原文と現代語訳も解説。『源氏物語』の魅力をまるごと図解した、初心者でもその内容と全体がすっきり楽しくわかる便利でお得な一冊!2024年NHK大河ドラマも作者・紫式部を描くことに決まり、話題、人気必至の名作を先取りして楽しめる。

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