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超速ラグビー不発。どうするエディー【二宮清純 スポーツの嵐】

Text:二宮清純

目標は「27年W杯でベスト4」

「我々は未来への大きな投資をしている。厳しい経験を重ねて学ぶことでしか強くなれない。勝つためには負けることも必要」

 2024年11月24日(現地時間)、敵地ロンドン・トゥイッケナムでイングランド代表に14対59と完敗した直後の日本代表ヘッドコーチ(HC)エディー・ジョーンズのセリフだ。

 未来への大きな投資とは、国際大会の経験の少ない若手にチャンスを与えたことを指す。今年だけで20人が代表初キャップを刻んだ。

 24年1月、代表HCに再就任したエディーは、「超速」というスローガンを掲げた。

 速く考え、速く予測し、速く判断する――。それが目標とする「27年W杯でベスト4」を達成する近道だと指揮官は説いた。

 しかし、言うは易し、行うは難し。80分間通じて、体も頭脳もフルスピードで動かし続けるのは至難の業だ。

 エディーが代表HCに復帰してからの日本代表のテストマッチ戦績は4勝7敗。日本よりランキング(当時)が上位のチームには6戦全敗だ。

 それでも指揮官は「結果は残念だが、世界のトップ4との差がわかったことは今後の糧になる」と強気の姿勢を崩さない。

 エディーの手腕は衆目の一致するところだ。15年w杯イングランド大会において、エディー・ジャパンは南アフリカを撃破するなど3勝をあげて世界を驚かせた。

 第1次政権時のエディーは選手たちに対し強権的に振るまった。スパルタ式のトレーニングを選手たちに課し、有無を言わせなかった。

 主将を務めた廣瀬俊朗は、「エディーさんは気性の激しい人で、私も何度か衝突した。でも“日本のラグビーを変えたい”という根本の思いが一緒だったからついていくことができた」と語っていた。

 しかし、時は巡り、選手たちの気質も変わった。

 今夏の宮崎合宿でエディーは、こんなことを語っていた。

「20年前のコーチングは“これをやりなさい”と言えば、みんながそれに従うスタイルだった。しかし、今の若い世代へのコーチングは、彼らの強みをいかに引き出すかという手法に変わってきている。いくつかの選択肢を与え、それを自分自身で選んでやってもらうようにしている」

 イングランドに完敗を喫したあと、一部の選手からは練習のあり方を巡って不満の声が上がった。「超速」もいいが、ディフェンスを見直さないと、強国相手には勝てない――。もっともな指摘だ。

 年が明ければ65歳になる指揮官。来年は正念場だ。

初出=週刊漫画ゴラク2024年12月27日発売号

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