日本で電車が進化した理由とは?【眠れなくなるほど面白い 図解 鉄道の話】

日本の鉄道事情と電車の特徴がマッチ

日本の鉄道車両はほとんどが電車です。海外では電気機関車が広く普及しましたが、なぜ日本では電車が主流になったのでしょう。

電車の最大の特徴は、動力が各車両に分散していること。能力を発揮する際も必要なパワーを分担できますし、結果として1機1機のモーターも小さくて済みます。ただし、そのぶん構造が複雑になるため、保守点検のコストがかかるのが難点です。ここからは国情に合わせてどちらを選択するかですが、欧米では電気機関車が重宝され、長距離列車やフランスのTGVなどといった高速鉄道にも使用されています。

ここで日本の鉄道の特徴を考えてみましょう。日本の場合、海外に比べて軸重(車軸1本あたりの重量)の制限が厳しい、列車の運行密度が高い、急カーブが多いといった特殊性があります。現状の軸重の規制を緩和すれば、パワーがある高出力の機関車を導入することができますが、日本は軟弱な地盤が多く、重大な事故につながる恐れがあるためそれが叶いません。

また、電気機関車は折り返し駅で付け替えのための余計な時間が生じるほか、その重量が仇となって急カーブでは軌道に大きな負担をかけます。これらを念頭に置いたとき、日本では電気機関車より電車のほうに大きなアドバンテージがあるので電車が主流となったのです。

日本の鉄道事情に電車がマッチ

1. 軸重の制限が厳しい

地盤が軟弱な箇所が多い日本。そのため軸重は最大でも18t以下と制限されています。ちなみに、アメリカでは「ビッグ・ボーイ」の愛称で知られる、総重量が548.3tにもなる蒸気機関車が存在していました。

2. 列車の運行密度が高い(ダイヤが過密)

日本の列車の運行密度は、世界屈指の過密さといわれています。その正確性と技術力は、日本の国民性が深く関係しているのです。

3. 路線に急カーブが多い

動力機構を分散できる電車は軸重が小さくても問題ありません。また、機関車に牽引される必要がないため、折り返し運転も容易でダイヤを圧迫しません。軽いので急カーブを高速で運転してもレールに負荷をかけないのも利点です。つまり日本の実情にマッチしているのです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 鉄道の話』著:綿貫 渉

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 鉄道の話』
著:綿貫 渉

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