信念が思考を歪めている? “信念バイアス・信念の保守主義”とは【眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス】

信じたものは本当に正しいのか?
【信念バイアス・信念の保守主義】

信念が思考に影響を与える

自分の信念や思い込みは、ときに論理的な思考を狂わせることがあります。たとえば「〇〇が正しい」と信じている場合、それを否定する意見や情報を吟味せず、「いいや、〇〇が正しいに決まっている」と決めつけがちです。このような思考になるのは、「信念バイアス」という認知バイアスが働くからです。

その信念があきらかに論理的に間違っている場合は気づきやすいかもしれませんが、正しいか間違っているか意見が割れるものについては注意が必要です。

たとえば「糖質を摂らないほうが体によい」と信じている場合、糖質を摂るべきという意見には耳を貸さず、再検討しなくなってしまったりします。こうなると、新たな研究結果が出ても中立の立場に立って考え直すことができなくなってしまいます。偏った考え方のまま固まってしまうわけです

また、このような信念バイアスはなかなか修正できないことも、アメリカの心理学者ウォード・エドワーズの研究で示されています。一度「こうだ」と思い込んだことは、それを否定する情報が出てもすぐには変わらないのです。これを「信念の保守主義」といいます。

自分の意見や考えが信念バイアスによるものでないか、ときには一度中立の立場に立って見直してみるのが大事といえます

信念や思い込みが招く認知バイアス

[信念バイアス]= 信念や思い込みのせいで正常な判断力を欠いてしまうこと

偏った見方になっていく ➡ 認知バイアス

偏った見方になっていく ➡ 認知バイアス

信念や思い込みを変えるのは容易ではない

最初の思い込みを引きずってしまう ➡ 信念の保守主義

参考文献

  • John Anderson, Cognitive Psychology and Its Implications, W.H.Freeman and Company, 1980.[J.R.アンダーソン(富田達彦/増井透/川崎恵理子/岸学訳)『認知心理学概論』誠信書房、1982年]
  • Jonathan Evans, Julie Barton and Paul Pollard, “On the Conflict Between Logic and Belief in Syllogistic Reasoning,” Memory & Cognition: 11(3),295-306, 1983.
  • Ward Edwards,”Conservatism in Human Information Processing,” in Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases, edited by DanielKahneman, Paul Slovic and Amos Tversky, Cambridge University Press, 1968.
  • 中島秀之/高野陽太郎/伊藤正男『思考』岩波書店、1994年。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』監修:高橋 昌一郎

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』
監修:高橋 昌一郎

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「認知バイアス」は物事の判断が、偏見や先入観、歪んだ情報・データ、個人的経験則・記憶、思い込みなどによって、非合理的になる心理現象。社会学(社会心理学)や経済学(経済行動学)、論理学、認知科学など幅広いジャンルで研究されている。

本書では、数ある「認知バイアス」から、「確証バイアス」「正常性バイアス」「同調性バイアス」「希少性バイアス」をはじめ「ハロー効果」「ダニング=クルーガー効果」「プロスペクト理論」「スリーパー効果」など、読者の関心や興味が強いと考えられるもの、身近で陥りやすい危険の高いもの、知っていると生活にも役立つものを中心に厳選して、図解でわかりやすく伝える。

フェイクニュースや詐欺的行為や犯罪が蔓延し、AI技術の向上などによって、「何が正しいか」わかりにくくなった現代の世の中で、賢く生きていくためには必須の知識!

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