“気分一致効果”を知れば落ち込みから抜け出せる?感情と記憶の関係とは【眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス】

落ち込みの連鎖に要注意!
【気分一致効果】

気分が思考を左右する認知バイアス

楽しい気分のときは旅行やグルメなど楽しいことを考えたり、楽しい出来事を思い起こしたりするでしょう。逆に落ち込んでいるときは不安な気持ちに襲われたり、辛かった出来事を思い出したりしませんか?このように、思考が気分に左右される現象を「気分一致効果」といいます。中立の立場で物事を判断できなくなる、認知バイアスの1つです

このことは、アメリカの心理学者ゴードン・バウアーの研究によって示されました。被験者を楽しい気分のグループと悲しい気分のグループに分け、それぞれに幸せな物語と不幸な物語を読んでもらったところ、楽しい気分のグループは幸せな物語を、悲しい気分のグループは不幸な物語をよく覚えていたそうです。自分の気分に近い話や出来事を記憶しやすく、また思い起こしやすくなるわけです。

それでは、悲しい気分のときは悲しいことばかり考えてしまい、どんどん落ち込んでいくのかというと、そうとは限りません。ネガティブな気分のときこそ楽しいことを考えたくなる「気分不一致効果」というものも知られています。不幸の連鎖に陥らないよう、心のバランスを取るために持っている習性といえるかもしれません。嫌なことがあったときは、この効果を思い出して気持ちを切り替えましょう。

気分次第でものの見え方が変わる

気分一致効果 = 楽しいときは楽しいことに、悲しいときは悲しいことに注意が向く現象

【楽しい気分のとき】

楽しいことを記憶したり思い出したりしやすい

【悲しい気分のとき】

悲しいことを記憶したり思い出したりしやすい

気分によって意識するものが変わってしまう➡認知バイアス

逆に落ち込んだときほど楽しいことを思い出す現象も

辛いことがあったけど…

気分不一致効果

気分の切り替えに

参考文献

  • Gordon Bower,“Mood and Memory,” American Psychologist: 36, 129-148, 1981.
  • Gordon Bower, Stephen Gilligan and Kenneth Monteiro, “Selectivity of Learning Caused by Affective States,” Journal of Experimental Psychology: General: 110(4), 451-473, 1981.
  • 大平英樹『感情心理学・入門』有斐閣(有斐閣アルマ)、2010年。
  • 太田信夫/多鹿秀継(編著)『記憶研究の最前線』北大路書房、2000年。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』監修:高橋 昌一郎

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』
監修:高橋 昌一郎

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「認知バイアス」は物事の判断が、偏見や先入観、歪んだ情報・データ、個人的経験則・記憶、思い込みなどによって、非合理的になる心理現象。社会学(社会心理学)や経済学(経済行動学)、論理学、認知科学など幅広いジャンルで研究されている。

本書では、数ある「認知バイアス」から、「確証バイアス」「正常性バイアス」「同調性バイアス」「希少性バイアス」をはじめ「ハロー効果」「ダニング=クルーガー効果」「プロスペクト理論」「スリーパー効果」など、読者の関心や興味が強いと考えられるもの、身近で陥りやすい危険の高いもの、知っていると生活にも役立つものを中心に厳選して、図解でわかりやすく伝える。

フェイクニュースや詐欺的行為や犯罪が蔓延し、AI技術の向上などによって、「何が正しいか」わかりにくくなった現代の世の中で、賢く生きていくためには必須の知識!

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